価格改定の実施で業績を下方修正! 鳥貴族(3193)を分析してみる

平成30年7月6日、鳥貴族(3193)は業績の下方修正を発表しました。
説明によると、昨年10月に実施した価格改定で増収に寄与すると想定したものの、お客様数及び注文点数が減少したため売上高が計画を下回る見通しとなったそうです。
本日は、そんな鳥貴族(3193)のファンダメンタルズについて見ていきたいと思います。
目 次
1.会社四季報で、会社を大まかにチェック
2-5.財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる |
1.会社四季報で、会社を大まかにチェック
まずは最近発売された会社四季報(2018年3集 夏号)から、同社のことについて大まかに見ていきます。
1-1.記事内容
業績記事は、「店舗純増直営80、FC23(前期各57、23)。既存店は客数減でも人員配置の見直しによる経費抑制効果発現。下期に客数回復見込む会社計画は過大ながら前号比増益幅拡大。19年7月期も積極出店継続」とプラス内容の記事です。
1-2.財務内容
自己資本比率は41.6%と、安全性に問題はなさそうです。
有利子負債は2,705百万円、総資産の16.4%を占めています。
資本金1,491百万円に対し、利益剰余金は3,950百万円になっています。
1-3.増収増益傾向の業績
売上高
(百万円) |
営業利益
(百万円) |
経常利益
(百万円) |
利益
(百万円) |
1株益
(円) |
|
13.7
(実績) |
12,864 | 392 | 492 | 212 | 27.5 |
14.7
(実績) |
14,616 | 690 | 831 | 410 | 52.4 |
15.7
(実績) |
18,659 | 1,118 | 1,082 | 585 | 57.0 |
16.7
(実績) |
24,509 | 1,595 | 1,547 | 981 | 85.8 |
17.7
(実績) |
29,336 | 1,457 | 1,426 | 967 | 83.6 |
18.7
(会社予想) |
33,957 | 1,507 | 1,437 | 589 | 50.9 |
2017年7月期は対前年比で利益が減少しているものの、ここ5年間は増収増益傾向です。
しかし、2018年7月期は再び増収減益になる予想です。
2.有価証券報告書から詳しく見ていく
続いて、有価証券報告書第31期(平成28年8年1日-平成29年7月31日)から詳しく見ていくことにします。
2-1.事業の内容
同社は、「鳥貴族」の単一ブランドで、関西圏・関東圏・東海圏の3商圏で焼鳥店の店舗を展開しています。
2-2.セグメント別売上高について
セグメントの名称 | 売上高
(千円) |
割合
(%) |
飲食事業 | 9,247,799 | 100 |
合計 | 9,247,799 |
同社は飲食事業の単一セグメントで販売を行っています。
2-3.経営上の重要な契約等について
相手先 | 契約の内容 |
加盟店 | 当社は、その有する営業ノウハウと「鳥貴族」の商標(サービスマーク)を使用して焼鳥屋を営業する資格ないし管理を加盟店に付与し、マニュアル等の印刷物、担当指導員を通じて加盟店の経営、店舗の営業を支援する。
加盟店は、契約に定める加盟金、ロイヤリティを支払う。 |
同社は、カレムードチェーン加盟店との間で、上記のような加盟契約を結んでいます。
2-4.発行済株式総数、資本金等の推移について
発行済株式総数増減数
(株) |
発行済株式総数残高
(株) |
資本金増減額
(千円) |
|
平成26年8月1日
~ 平成27年7月31日 |
669,000 | 10,594,800 | 12,482 |
平成27年7月9日 | 600,000 | 11,194,800 | 721,850 |
平成27年7月29日 | 157,500 | 11,352,300 | 189,485 |
平成27年8月1日
~ 平成28年7月31日 |
231,000 | 11,583,300 | 14,511 |
平成28年8月1日
~ 平成29年7月31日 |
39,000 | 11,622,300 | 3,144 |
毎年のように、新たに株式を発行して資金調達を行っています。
その結果、発行済株式総数残高はこの3年間で9.7%も増えています。
新たに株式を発行すれば1株あたりの利益は希薄化をしますので、結果的に株主としては損をすることになります。
2-5.財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる
次に、財務3表を分析して気になったポイントについて解説します。
2-5-1.現金及び預金について
|
H27.7.31
(千円) |
割合
(%) |
H28.7.31
(千円) |
割合
(%) |
H29.7.31
(千円) |
割合
(%) |
流動資産 | ||||||
現金及び預金 | 4,750,890 | 43.2% | 3,727,971 | 29.9% | 4,813,287 | 30.2% |
総資産合計 | 11,005,204 | 12,477,115 | 15,942,065 |
現金及び預金が増減しています。
キャッシュ・フロー計算書で確認をすると、平成28年7月期は営業キャッシュ・フローから資金を獲得したものの、有形固定資産の取得や長期借入金の返済が要因で現金及び預金が減少しています。
平成29年7月期は営業キャッシュ・フローから資金を獲得したことに加え、長期借入金の借入を行ったことが要因で現金及び預金が増加しています。
2-5-2.投資キャッシュ・フローでは、有形固定資産の取得が中心
|
H27.7.31
(千円) |
H28.7.31
(千円) |
H29.7.31
(千円) |
投資キャッシュ・フロー | ▲1,348,140 | ▲2,476,004 | ▲2,394,338 |
有形固定資産の取得による支出 | ▲1,096,386 | ▲2,142,125 | ▲1,986,161 |
有形固定資産の売却による収入 | 0 | 12,000 | 16,530 |
投資キャッシュ・フローでは、有形固定資産の取得が中心になっています。
|
H27.7.31
(千円) |
割合
(%) |
H28.7.31
(千円) |
割合
(%) |
H29.7.31
(千円) |
割合
(%) |
有形固定資産 | ||||||
建物(純額) | 3,363,078 | 30.6% | 4,993,005 | 40.0% | 6,455,878 | 40.5% |
機械及び装置(純額) | 4,282 | 0.0% | 2,942 | 0.0% | 2,877 | 0.0% |
車両運搬具(純額) | 40 | 0.0% | 27 | 0.0% | 13 | 0.0% |
工具、器具及び備品(純額) | 71,272 | 0.6% | 157,732 | 1.3% | 217,992 | 1.4% |
リース資産(純額) | 496,357 | 4.5% | 774,471 | 6.2% | 1,148,821 | 7.2% |
建物仮勘定(純額) | 38,348 | 0.3% | 17,389 | 0.1% | 5,932 | 0.0% |
有形固定資産合計 | 3,973,377 | 36.1% | 5,945,566 | 47.7% | 7,831,513 | 49.1% |
総資産合計 | 11,005,204 | 12,477,115 | 15,942,065 |
その結果、有形固定資産は3,973,377千円から7,831,513千円にまで増えていますが、中でも建物(純額)の増加が目立ちます。
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H27.7.31
|
H28.7.31
|
H29.7.31
|
合計店舗数 | 414 | 492 | 567 |
建物(純額)が増加した理由は、出店に伴って店舗数が増えたためのようです。
2-5-3.高い営業利益率
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H27.7.31
(%) |
H28.7.31
(%) |
H29.7.31
(%) |
営業利益率 | 6.0 | 6.5 | 5.0 |
平成29年7月期に営業利益率は対前年比で低下しています。その要因は、国産食材の仕入価格高騰やキャンペーンの実施、人件費を中心とした店舗運用コストの増加等によるためです。
しかし、大手飲食企業の平均的な営業利益率は3.6%であるため、同社は以前として高い営業利益率を誇っています。
この営業利益率の高さは、手間を省いた人件費の削減、鶏肉を使ったメニューへの絞り込み、地下などの家賃が安いところに出店する経営戦略にあるそうです。
2-5-4.経営指標等について
|
H27.7.31
|
H28.7.31
|
H29.7.31
|
売上高 (千円) |
18,659,881 | 24,509,569 | 29,336,597 |
経常利益 (千円) |
1,082,123 | 1,547,419 | 1,426,406 |
当期純利益 (千円) |
585,486 | 981,723 | 967,555 |
営業キャッシュ・フロー (千円) |
1,704,194 | 2,412,451 | 3,000,563 |
総資産額 (千円) |
11,005,212 | 12,477,123 | 15,942,074 |
従業員数 (人) |
491 | 601 | 700 |
売上高が増収傾向ですが、平成29年7月期には経常利益及び当期純利益とも減益になっています。
売上高の拡大に伴い、総資産額及び従業員数も増えています。
以上より、この会社は成長銘柄といえるでしょう。
3.私の見解
増収減益の業績予想になっていますが、売上高及び店舗数ともに伸び、成長段階の会社であるように感じられました。また多くの現金及び預金を保有し負債も過剰ではないため、リスクにも慎重な会社であるように感じます。
いずれ消費者のマインドが回復をし、長期的には売上高が右肩上がりになると考えるのであれば投資対象としては面白い銘柄かもしれません。
しかし、毎年のように新たな株式を発行しているところが気がかりです。
7月6日の終値である2,432円で計算をすると、PERは21.05倍、PBRは3.94倍になっています。
最後に、株式投資は自己責任でお願いします。