急落株、旭ダイヤモンド工業(6140)を分析してみる

      2018/05/22

 2018年5月15日に、旭ダイヤモンド工業(6140)の決算発表がありました。

 これによると、平成30年3月期は売上高は対前年比で8.2%の増収ですが、親会社に帰属する当期純利益は対前年比で35.1%の減益になっています。

 (平成30年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)

 この発表を受け、株価は急落しました。

 (旭ダイヤ—急落、減損計上による減配や今期減益見通しを嫌気

 この記事を読んで興味を持った私は、同社のファンダメンタルズを調べてみることにしました。

 財務データをダウンロードする(Excel形式)

 

 

目 次

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 1-1.記事内容

 1-2.財務内容

 1-3.減収減益傾向の業績

2.決算短信から詳しく見ていく

 2-1.事業の内容

 2-2.販売実績について

 2-3.地域ごとの売上高

 2-4.今後の見通し

 2-5.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

  2-5-1.現金及び預金が増加

  2-5-2.優れた財務体質

  2-5-3.投資キャッシュ・フローでは、有形固定資産の取得が中心

  2-5-4.自己株式を処分

  2-5-5.大幅な減益

 2-6 気になる問題

  2-6-1.たな卸資産回転比率が低い

3.私の見解

 

 

 

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 


 

 まずは最近発売された会社四季報(2018年2集 春号)から、同社のことについて大まかに見ていきます。

 

 

 

1-1.記事内容

 

 業績記事は、「主柱の電着ワイヤ底入れで想定上回る回復。自動車など各業界向け工具出荷も伸長。増益幅拡大。19年3月期は電着ワイヤが回復継続。自動車、半導体、機械向けの工具出荷底堅く、営業益復調。」と業績に期待が持てそうな内容になっています。

 

 

 

1-2.財務内容

 

 自己資本比率は79.1%もあり、安全性は十分です。

 有利子負債は454百万円になり、総資産の0.6%しかありません。

 資本金4,102百万円に対し、利益剰余金は43,748百万円もあります。

 

 

 

1-3.減収減益傾向の業績

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

15.3

(実績)

45,550 5,136 5,991 3,584 62.1
16.3

(実績)

45,459 4,750 5,092 3,338 58.3
17.3

(実績)

42,024 2,645 2,945 2,487 44.3
18.3

(実績)

45,458 4,640 5,074 1,614 29.0
19.3

(会社予想)

43,000 2,700 3,350 2,250 40.40

 2015年3月期から2017年3月期まで売上高の減収が続いていましたが、2018年3月期からは増収に転じています。

 しかし、利益は2015年3月期から減益が続いています。

 2019年3月期の業績については、減収増益を予想しています。

 

 

 

 

2.決算短信から詳しく見ていく

 


 

 続いて、2018年3月期決算短信[日本基準](連結)から詳しく見ていくことにします。

 

 

 

2-1.事業の内容

 

 同社の事業内容は、主に電子・半導体業界、輸送機器業界、機械業界、石材、建設業界向けに、ダイヤモンド工具(CBN工具及び砥石を含む)の製造・販売を行っています。

 

 

 

2-2.販売実績について

 

業界別 売上高

(百万円)

割合

(%)

電子・半導体業界 19,257 42.4
輸送機器業界 9,300 20.5
機械業界 9,884 21.7
石材、建設業界 5,353 11.8
その他 1,662 3.7
合計 45,458  

 同社は電子・半導体業界向けに対する売上高が最も高く、売上全体の42.4を占めています。

 

 

 

2-3.地域ごとの売上高

 

  売上高

(百万)

比率

(%)

日本 20,480 45.1
台湾 4,487 9.9
中国 7,668 16.9
その他(アジア・オセアニア) 6,042 13.3
欧州 4,079 9.0
その他 2,700 5.9
売上高合計 45,458  

 同社は日本以外の地域でも販売を行っており、海外での売上高は全体の54.9%を占めています。

 

 

 

2-4.今後の見通し

 

  平成30年3月期の連結業績

(百万円)

平成31年3月期の連結業績予想

(百万円)

対前期増減率

(%)

売上高 45,458 43,000 ▲5.4
営業利益 4,640 2,700 ▲41.8
経常利益 5,074 3,350 ▲34.0
親会社株主に帰属する当期純利益 1,614 2,250 39.3

 平成31年3月期は主に太陽電池シリコンウエーハ加工用が減少する見込みであることから、売上高は減収を見込んでいます。

 親会社に帰属する当期純利益については、平成30年3月期に計上した特別損失がなくなる見込みであることから増益を予想しています。

 

 

 

2-5.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

 

 次に、連結財務3表を分析して気になったポイントについて解説します。

 

2-5-1.現金及び預金が増加

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

割合

(%)

H29.3.31

(百万円)

割合

(%)

H30.3.31

(百万円)

割合

(%)

流動資産            
 現金及び預金 12,598 17.7% 14,916 21.1% 18,202 24.4%
総資産合計 71,130   70,675   74,668  

 3期に渡り現金及び預金が増加しています。

 連結キャッシュ・フロー計算書で確認をすると、いずれも期も営業キャッシュ・フローから資金を獲得したことが要因で現金及び預金が増加しています。

 また保有する現金及び預金は18,202百万円になりますが、これは負債合計14,965百万円よりも多い金額です。

 

2-5-2.優れた財務体質

 

 短期的な支払能力を表す指標に当座比率があります。

 この指標は100%あればよいといわれていますが、同社の場合は487%もあります。

 また自己資本比率は80%もあり、非常に優れた財務体質です。

 

2-5-3.投資キャッシュ・フローでは、有形固定資産の取得が中心

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

H29.3.31

(百万円)

H30.3.31

(百万円)

投資キャッシュ・フロー ▲3,228 ▲1,194 ▲239
有形固定資産の取得による支出 ▲3,205 ▲2,200 ▲2,313
有形固定資産の売却による収入 40 9 18

 投資キャッシュ・フローでは、有形固定資産の取得が中心になっています。

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

H29.3.31

(百万円)

H30.3.31

(百万円)

営業キャッシュ・フロー 7,290 6,205 6,439
 減価償却費 3,627 3,353 3,165

 しかし、減価償却費が有形固定資産の取得価格を上回っています。

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

割合

(%)

H29.3.31

(百万円)

割合

(%)

H30.3.31

(百万円)

割合

(%)

有形固定資産            
 建物及び構築物(純額) 10,063 14.1% 9,465 13.4% 8,122 10.9%
 機械装置及び運搬具(純額) 7,575 10.6% 7,070 10.0% 5,434 7.3%
 土地 5,053 7.1% 5,045 7.1% 5,061 6.8%
 建物仮勘定 368 0.5% 262 0.4% 311 0.4%
 その他(純額) 1,495 2.1% 1,289 1.8% 988 1.3%
有形固定資産合計 24,554 34.5% 23,131 32.7% 19,916 26.7%
総資産合計 71,130   70,675   74,668  

 そのため、有形固定資産合計は年々減少しています。

 おそらくこの投資は生産拡大の設備投資ではなく、設備の維持・更新を目的とした設備投資だと考えられます。

 

2-5-4.自己株式を処分

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

H29.3.31

(百万円)

H30.3.31

(百万円)

自己株式の処分 1,244 859 0

 連結株主資本等変動計算書を確認すると、平成28年3月期と平成29年3月期は自己株式の処分を行っています。

 

 

 

H28.3.31

(千株)

H29.3.31

(千株)

H30.3.31

(千株)

発行済株式数 56,710 55,700 55,700

 その結果、発行済株式数は減少しています。

 自己株式の処分を行うメリットは市場に流通する株式数が少なくなるため、1株当たりの当期純利益が増加します。

 また、株主資本利益率( ROE )の向上にもつながりますので、株主に対する最高の利益還元方法といえます。

 

2-5-5.大幅な減益

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

H29.3.31

(百万円)

H30.3.31

(百万円)

売上高 45,459 42,024 45,458
当期純利益 3,338 2,487 1,614

 平成30年3月期は売上高が増収であるにもかかわらず、当期純利益は減益になっています。

 その要因は、特別損失に減損損失を計上しているためです。

 しかし、この減損損失はキャッシュの支出は伴っていません。そのため、営業キャッシュ・フロー上ではプラスになっています。

 

 

 

2-6 気になる問題

 

 さて、あえて同社の問題を1つ挙げたいと思います。

 

2-6-1.たな卸資産回転比率が低い

 

 

 

H28.3.31

(回転)

H29.3.31

(回転)

H30.3.31

(回転)

たな卸資産回転比率 6.98 6.74 6.79

 あえて同社の問題点を挙げるとすれば、たな卸資産回転比率が6.79回転しかないことです。

 しかし、たな卸資産回転比率は3期連続で比べてみても特に悪化していません。

 

※ 製造業の平均的なたな卸資産回転比率は10回転といわれています。

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

割合

(%)

H29.3.31

(百万円)

割合

(%)

H30.3.31

(百万円)

割合

(%)

流動資産            
 商品及び製品 2,374 3.3% 2,313 3.3% 2,413 3.2%
 仕掛品 1,474 2.1% 1,480 2.1% 1,820 2.4%
 原材料及び貯蔵品 2,661 3.7% 2,440 3.5% 2,458 3.3%
たな卸資産合計 6,509 9.2% 6,233 8.8% 6,691 9.0%
総資産合計 71,130   70,675   74,668  

 また、たな卸資産合計は総資産の9.0%なので在庫水準は適正だと考えられます。

 そのため総合的に考えると、たな卸資産に問題はないと考えています。

 

 

 

 

3.私の見解

 


 

 同社のファンダメンタルズを分析して思ったことは、会社にカネが余っているように感じたことです。また、一部の余剰資金は有価証券や投資有価証券などの財テクとして運用しているようにも感じます。

 保守的な会社でもあるように感じられたため、業績の上方修正は発表しにくいと思います。

 そのため、多くの投資家に注目されにくく株価も上がりにくいと思いますが、投資対象としては魅力的な会社だと思います。

 5月17日の終値である911円で計算をすると、PERは22.55倍、PBRは0.87倍になっています。

 

 最後に、株式投資は自己責任でお願いします。

 

 

 

 

 - 業種別, 機械

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。