増収減益株、イナリサーチ(2176)を分析してみる

   

 平成30年5月14日に、イナリサーチ(2176)の決算発表がありました。

 これによると、平成30年3月期は対前年比で増収増益を達成しています。

 しかし、平成31年3月期の連結業績予想は、対前年比で増収減益になる予想です。この発表を受け、株価は値下がりをしました。

 (平成30年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

 そこで今回は、同社のファンダメンタルズについて見ていきたいと思います。

 財務データをダウンロードする(Excel形式)

 

 

目 次

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 1-1.記事内容

 1-2.財務内容

 1-3.回復傾向の業績

2.決算短信から詳しく見ていく

 2-1.事業の内容

 2-2.販売実績について

 2-3.借入金について

 2-4.今後の見通し

 2-5.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

  2-5-1.現金及び預金が増加

  2-5-2.短期借入金と長期借入金について

  2-5-3.前受金が増加

  2-5-4.赤字業績について

 2-6 気になる問題

  2-6-1.たな卸資産が増加

  2-6-2.厳しい資金繰り

3.私の見解

 

 

 

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 


 

 まずは最近発売された会社四季報(2018年2集 春号)から、同社のことについて大まかに見ていきます。

 

 

 

1-1.記事内容

 

 業績記事は、「非臨床受託堅調。環境も学術などの更新需要に乗る。受託採算見直し、作業効率も改善。19年3月期は非臨床の国内需要が持続。電子申請対応で海外案件獲得増も。稼働率さらに向上し、営業利益改善。」と期待が持てそうな内容になっています。

 

 

 

1-2.財務内容

 

 自己資本比率は19.7%しかなく、安全性に不安が残ります。

 有利子負債は1,214百万円、総資産の38.5%も占めています。

 資本金684百万円に対し、利益剰余金は▲653百万円とマイナになっています。

 

 

 

1-3.回復傾向の業績

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

15.3

(実績)

2,994 47 32 8 2.8
16.3

(実績)

2,116 ▲207 ▲230 ▲1,204 ▲401.6
17.3

(実績)

2,295 56 23 31 10.6
18.3

(実績)

2,425 196 156 141 47.28
19.3

(会社予想)

2,778 117 78 66 22.03

 2016年3月期は大幅な赤字業績になっています。

 しかし、それ以降業績の回復が続いていましたが、2019年3月期は増収減益の業績予想になっています。

 

 

 

 

2.決算短信から詳しく見ていく

 


 

 続いて、2018年3月期決算短信[日本基準](連結)から詳しく見ていくことにします。

 

 

 

2-1.事業の内容

 

 同社の事業内容は、受託試験、環境から構成されています。

 

セグメント別 事業内容
受託試験 動物試験等を通じて医薬品・食品の開発支援を行う。
環境 実験動物施設の設計及び機材の販売を行う。

 

 

 

2-2.販売実績について

 

セグメントの名称 売上高

(千円)

割合

(%)

受託試験 2,174,776 90.0
環境 250,915 10.0
合計 2,425,691  

 同社では受託試験事業の売上高が最も高く、売上全体の9割を占めています。

 

相手先 販売高

(千円)

割合

(%)

株式会社住化分析センター 302,801 12.5

 また、主な販売相手は株式会社住化分析センターになっており、売上全体の12.5%を販売しています。

 

 

 

2-3.借入金について

 

 同社は主力取引銀行の支援のもと、取引金融機関に対し、平成30年5月末までの借入金元本返済猶予を受けている状況にあるそうです。

 また、今後の金融支援については経営改善計画の遂行により継続して受けられる見込みであるそうです。

 

 

 

2-4.今後の見通し

 

  平成30年3月期の連結業績

(百万円)

平成31年3月期の連結業績予想

(百万円)

対前期増減率

(%)

売上高 2,425 2,778 14.5
営業利益 196 117 ▲40.4
経常利益 156 78 ▲49.5
親会社株主に帰属する当期純利益 141 66 ▲53.4

 平成31年3月期は製薬市場が緩やかな回復傾向にあることや、優先委託して下さる顧客があることなどから、売上高は増収を見込んでいます。

 しかし、粗利益率は低下する見込みであり、海外市場開拓のための費用増、投資等により利益は一時的に減少すると見込んでいるそうです。

 

 

 

2-5.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

 

 次に、連結財務3表を分析して気になったポイントについて解説します。

 

2-5-1.現金及び預金が増加

 

 

 

H28.3.31

(千円)

割合

(%)

H29.3.31

(千円)

割合

(%)

H30.3.31

(千円)

割合

(%)

流動資産            
 現金及び預金 145,070 5.5% 237,036 8.2% 916,411 26.6%
総資産合計 2,649,533   2,888,174   3,442,223  

 3期に渡り、現金及び預金が増加しています。

 連結キャッシュ・フロー計算書で確認をすると、平成29年3月期は銀行からの借入を行ったことが要因で現金及び預金が増えています。

 平成30年3月期は営業キャッシュ・フローから資金を獲得したことが要因で現金及び預金が増えています。

 

2-5-2.短期借入金と長期借入金について

 

 

 

H28.3.31

(千円)

割合

(%)

H29.3.31

(千円)

割合

(%)

H30.3.31

(千円)

割合

(%)

流動負債            
 短期借入金 306,670 11.6% 446,670 15.5% 496,670 14.4%
流動資産            
 売上債権 489,045 18.5% 652,442 22.6% 382,061 11.1%
 たな卸資産 459,750 17.4% 509,276 17.6% 691,838 20.1%
固定負債            
 長期借入金 829,447 31.3% 620,598 21.5% 620,598 18.0%
有形固定資産            
 有形固定資産合計 1,489,783 56.2% 1,386,378 48.0% 1,324,396 38.5%
総資産合計 2,649,533   2,888,174   3,442,223  

 流動負債には短期借入金、固定負債には長期借入金が計上されています。

 短期借入金は流動資産の運転資金として活用し、長期借入金は有形固定資産の設備投資資金として活用していると考えられます。

 平成29年3月期は短期借入金が446,670千円に増加していますが、これは売上債権やたな卸資産などの運転資金不足を補うための借入だと考えられます。

 

2-5-3.前受金が増加

 

 

 

H28.3.31

(千円)

割合

(%)

H29.3.31

(千円)

割合

(%)

H30.3.31

(千円)

割合

(%)

流動負債            
 前受金 278,972 10.5% 240,225 8.3% 562,859 16.4%
総資産合計 2,649,533   2,888,174   3,442,223  

 前受金とは、手付金や内金といったようなもので、商品の仕入れや販売の際に商品代金の一部を先に支払ったり受け取ったりしたときに使用する勘定科目です。

 もう少し説明をすると、いわゆる将来の売上高のようなものです。

 これが増えているということは将来の売上高が確保できているようなものであり、私は注目をしています。

 

2-5-4.赤字業績について

 

 

 

H28.3.31

(千円)

H29.3.31

(千円)

H30.3.31

(千円)

当期純利益 ▲1,204,319 31,892 141,806

 平成28年3月期には大幅な赤字業績を計上しています。

 しかし、この大幅な赤字業績は特別損失として減損損失や事業構造改善費用などの特別損失を計上したためです。

 これらの特別損失はキャッシュの支出は伴っていません。そのため、営業キャッシュ・フロー上ではプラスになっています。

 

 

 

2-6 気になる問題

 

 さて、同社のファンダメンタルズを分析していると気になる問題もありました。そのことについても取り上げていきたいと思います。

 

2-6-1.たな卸資産が増加

 

 

 

H28.3.31

(千円)

割合

(%)

H29.3.31

(千円)

割合

(%)

H30.3.31

(千円)

割合

(%)

流動資産            
 商品及び製品 1,075 0.0% 925 0.0% 885 0.0%
 仕掛品 348,457 13.2% 409,209 14.2% 594,863 17.3%
 原材料及び貯蔵品 110,218 4.2% 99,142 3.4% 96,090 2.8%
たな卸資産合計 459,750 17.4% 509,276 17.6% 691,838 20.1%
総資産合計 2,649,533   2,888,174   3,442,223  

 3期に渡り、たな卸資産が増加しています。

 

 

 

H28.3.31

(回転)

H29.3.31

(回転)

H30.3.31

(回転)

たな卸資産回転比率 4.60 4.51 3.51

 それに伴い、たな卸資産回転比率は悪化しています。

 

 

 

H28.3.31

(%)

H29.3.31

(%)

H30.3.31

(%)

総利益率 17.1 25.3 29.2

 また、総利益率は増加しています。

 本来計上するべき費用を計上せず在庫を水増しした場合は、総利益率が増加します。

 このことから、費用の過少計上やたな卸資産が不良品化している可能性が考えられます。

 少なくとも、今後もたな卸資産が増えていくようであれば要注意だと思います。

 

2-6-2.厳しい資金繰り

 

 企業の短期的な支払能力を表す指標として当座比率があります。一般に、100%以上あることが望ましいといわれています。

 しかし、同社の場合は65.2%しかありません。

 また自己資本比率は21.1%しかなく、ファンダメタルズを分析していても資金繰りが厳しいように感じられました。

 

 

 

 

3.私の見解

 


 

 平成31年3月期は海外市場の開拓費などで利益は減益になる見込みですので、長期的には業績を伸ばしていくことを期待したいと思います。

 しかし、私自身は将来の業績よりも、たな卸資産の増加と資金繰りが厳しい状況にあることの方が気がかりです。

 現在は銀行への返済を待ってもらっている状況にありますが、投資家はそのことに注視する必要があると思います。

 5月15日の終値である1,036円で計算をすると、PERは47.07倍、PBRは4.38倍になっています。

 

 最後に、株式投資は自己責任でお願いします。

 

 

 

 

 - サービス業, 業種別

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