優良株、ファナック(6954)を分析してみる

   

 2018年4月26日にファナック(6954)の決算発表がありました。これによると、2018年3月期の連結業績は売上高が対前年比で35.3%の増収、利益は対前年比で42.5%の増益です。

 しかし、IT関連の需要が鈍化することへの懸念や、貿易摩擦の懸念などの要因から2019年3月期通期の連結業績については減収減益を予想しています。

 (2018年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

 そのことに嫌気した投資家によって、株価は大幅に下落しました。

 そこで今回は、ファナック(6954)のファンダメンタルズについて見ていきたいと思います。

 財務データをダウンロードする(Excel形式)

 

 

目 次

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 1-1.記事内容

 1-2.財務内容

 1-3.減収減益の業績

2.決算短信から詳しく見ていく

 2-1.事業の内容

 2-2.販売実績について

 2-3.地域ごとの売上高

 2-4.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

  2-4-1.現金及び預金が減少

  2-4-2.運転資金が増加

  2-4-3.金融商品が多い

  2-4-4.高い営業利益率

  2-4-5.投資キャッシュ・フローでは、有形固定資産の取得が中心

  2-4-6.財務キャッシュ・フローでは、配当金の支払いが中心

 2-5 気になる問題

  2-5-1.減価償却費の計上額について

3.私の見解

 

 

 

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 


 

 まずは最近発売された会社四季報(2018年2集 春号)から、同社のことについて大まかに見ていきます。

 

 

 

1-1.記事内容

 

 業績記事は、「NC装置やロボット絶好調。小型切削加工機にスマホ特需発生。営業増益幅拡大。19年3月期はロボットが一段拡大。NC装置も受注高水準続き、設備増強も寄与。営業増益続く。業績連動で増配。」と絶好調な内容になっています。

 

 

 

1-2.財務内容

 

 自己資本比率は85.2%もあり、安全性は十分です。

 有利子負債はなく、無借金経営が行われています。

 資本金69,014百万円に対し、利益剰余金は1,351,501百万円もあります。

 

 

 

1-3.減収減益の業績

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

15.3

(実績)

729,760 297,839 311,951 207,599 1,061
16.3

(実績)

623,418 215,567 229,361 159,700 816.8
17.3

(実績)

536,942 153,217 168,829 127,697 658.6
18.3

(実績)

726,596 229,604 249,525 181,957 938.6
19.3

(会社予想)

634,200 151,700 163,800 137,700 710.3

※ 2018年4月1日から2019年3月31日までの為替レートは、平均100円/ドル、125円/ユーロを想定しています。

 

 2015年3月期から2017年3月期まで減収減益が続いていましたが、2018年3月期には増収増益に転じています。

 しかし2019年3月期には再び減収減益を予想していますが、過小に見積もりすぎではないかと思われます。

 

 

 

 

2.決算短信から詳しく見ていく

 


 

 続いて、2018年3月期決算短信[日本基準](連結)から詳しく見ていくことにします。

 

 

 

2-1.事業の内容

 

 同社は、自動化による生産システムに使用されるCNCシステムとCNCシステムの技術をベースとしたその応用商品の開発、製造、販売を主な事業とする単一業種の事業を営んでいます。

 

 

 

2-2.販売実績について

 

部門 売上高

(百万円)

割合

(%)

FA 222,254 30.6
ロボット 227,827 31.3
ロボマシン 190,182 26.2
サービス 86,333 11.9
合計 726,596  

 同社ではロボット部門の売上高が最も高く、売上全体の31.3%を占めています。

 その次はFA部門の売上高が高く、売上全体の30.6%を占めています。

 ちなみに一番売上高が伸びたのはロボマシン部門で、対前期比で102.5%も伸びています。

 

 

 

2-3.地域ごとの売上高

 

  売上高

(百万円)

比率

(%)

日本 137,079 18.9
米州 144,954 19.9
欧州 110,378 15.2
アジア 329,523 45.4
その他 4,662 0.6
売上高合計 726,596  

 同社はアジア地域での売上高が最も高く、全体の45.4%を占めています。

 

 

 

2-4.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

 

 次に、連結財務3表を分析して気になったポイントについて解説します。

 

2-4-1.現金及び預金が減少

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

割合

(%)

H29.3.31

(百万円)

割合

(%)

H30.3.31

(百万円)

割合

(%)

流動資産            
 現金及び預金 686,662 45.4% 629,761 40.2% 602,329 34.8%
総資産合計 1,512,895   1,564,769   1,729,080  

 3期に渡り、現金及び預金が減少しています。

 連結キャッシュ・フロー計算書で確認をすると、営業キャッシュ・フローから資金を獲得したものの、有形固定資産の取得や配当期の支払による資金の支出によって現金及び預金が減少しています。

 

2-4-2.運転資金が増加

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

割合

(%)

H29.3.31

(百万円)

割合

(%)

H30.3.31

(百万円)

割合

(%)

売上高 623,418   536,942   726,596  
流動資産            
 受取手形及び売掛金 100,307 6.6% 120,787 7.7% 175,460 10.1%
 商品及び製品 52,736 3.5% 60,580 3.9% 71,680 4.1%
 仕掛品 39,206 2.6% 43,892 2.8% 56,405 3.3%
 原材料及び貯蔵品 11,124 0.7% 13,864 0.9% 22,033 1.3%
流動負債            
 支払手形及び買掛金 24,815 1.6% 36,011 2.3% 52,901 3.1%
総資産合計 1,512,895   1,564,769   1,729,080  

 3期に渡り、売上債権やたな卸資産などの運転資金が増加しています。

 きっと、旺盛な受注に会社としてはウハウハな状態であることでしょう。

 

2-4-3.金融商品が多い

 

 

 

H27.12.31

(百万円)

割合

(%)

H28.12.31

(百万円)

割合

(%)

H29.12.31

(百万円)

割合

(%)

流動資産            
 現金及び預金 686,662 45.4% 629,761 40.2% 602,329 34.8%
 受取手形及び売掛金 100,307 6.6% 120,787 7.7% 175,460 10.1%
 有価証券 145,000 9.6% 145,000 9.3% 145,000 8.4%
投資その他の資産            
 投資有価証券 65,809 4.3% 72,195 4.6% 89,946 5.2%
金融資産合計 997,778 66.0% 967,743 61.8% 1,012,735 58.6%
総資産合計 1,512,895   1,564,769   1,729,080  

 現金及び預金などのような、ゲンナマに近い金融商品が1,012,735百万円もあり、総資産の58.6%を占めるキャッシュ・リッチな会社です。

 また、短期的な支払能力を表す当座比率は480%もあり、非常に優れた財務体質です。

 自己資本比率も84.9%もあるため、財務的に見ても倒産とは程遠い会社と言ってよいでしょう。

 

※ 一般に、当座比率は100%あればよいと言われています。

 

2-4-4.高い営業利益率

 

 

 

H28.3.31

(%)

H29.3.31

(%)

H30.3.31

(%)

営業利益率 34.6 28.5 31.6

 営業利益率が31.6%もある高収益体質な会社です。

 のちほど触れますが、営業利益率が高い秘密は減価償却費の計上額にあると考えています。

 

※ 製造業の平均的な営業利益率は、4.0%になっています。

 

2-4-5.投資キャッシュ・フローでは、有形固定資産の取得が中心

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

H29.3.31

(百万円)

H30.3.31

(百万円)

投資キャッシュ・フロー ▲112,677 ▲88,562 ▲130,257
有形固定資産の取得による支出 ▲102,008 ▲87,509 ▲103,016

 3期に渡り、営業キャッシュ・フローから得られたほとんどの資金を有形固定資産の取得のために使用しています。

 

  H28.3.31

(百万円)

割合

(%)

H29.3.31

(百万円)

割合

(%)

H30.3.31

(百万円)

割合

(%)

有形固定資産            
 建物及び構築物(純額) 97,821 6.5% 195,765 12.5% 230,204 13.3%
 機械装置及び運搬具(純額) 27,484 1.8% 41,668 2.7% 44,484 2.6%
 土地 131,800 8.7% 134,400 8.6% 143,036 8.3%
 建物仮勘定 85,917 5.7% 22,015 1.4% 54,654 3.2%
 その他(純額) 9,038 0.6% 12,542 0.8% 13,499 0.8%
有形固定資産合計 352,060 23.3% 406,390 26.0% 485,877 28.1%
総資産合計 1,512,895   1,564,769   1,729,080  

 その結果、有形固定資産合計額が増えています。

 ちなみに、平成29年3月期の主な設備投資は栃木県にCNC・サーボモータ等の新工場と茨城県にロボット工場用地の取得を行っています。

 平成30年3月期には茨城県においてロボット工場の建設を進め、生産能力の増強に取り組んできたようです。

 

2-4-6.財務キャッシュ・フローでは、配当金の支払いが中心

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

H29.3.31

(百万円)

H30.3.31

(百万円)

財務キャッシュ・フロー ▲169,572 ▲90,267 ▲93,097
配当金の支払額 ▲151,237 ▲76,505 ▲92,003

 3期に渡り、高額の配当金を支払っています。

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

H29.3.31

(百万円)

H30.3.31

(百万円)

当期純利益 159,700 127,697 181,957
配当額 151,237 76,505 92,003
会社に残る利益 8,463 51,192 89,954

 その結果、会社にはほとんど利益が残っていません。

 その理由は、配当性向を60%とする基本方針をとっているためです。株主に利益を積極的に還元をする姿勢が伺えます。

 

 

 

2-5 気になる問題

 

 さて、同社のファンダメンタルズを分析している中で気になる問題がありました。そのことについても取り上げていきたいと思います。

 

2-5-1.減価償却費の計上額について

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

H29.3.31

(百万円)

H30.3.31

(百万円)

営業キャッシュ・フロー利益要素 123,573 144,326 242,550
当期純利益 159,700 127,697 181,957
差額 ▲36,127 16,629 60,593

 同社の場合、当期純利益と比べたら営業キャッシュ・フロー利益要素が少ないように感じます。

 その要因について営業キャッシュ・フロー計算書で確認をすると、減価償却費の計上額にありました。

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

H29.3.31

(百万円)

H30.3.31

(百万円)

営業キャッシュ・フロー 140,633 121,713 175,990
 税金等調整前当期純利益 229,361 168,829 249,525
 減価償却費 21,106 26,530 34,190

 私がこれまでに見てきた多くの製造業は、有形固定資産の割合が多いため税金等調整前当期純利益の2,3倍以上の減価償却費を計上していました。

 しかし同社が計上している減価償却費は税金等調整前当期純利益と比べてもごくわずかです。

 

 

 

H28.3.31

(百万円)

割合

(%)

H29.3.31

(百万円)

割合

(%)

H30.3.31

(百万円)

割合

(%)

有形固定資産            
 建物及び構築物(純額) 97,821 6.5% 195,765 12.5% 230,204 13.3%
 機械装置及び運搬具(純額) 27,484 1.8% 41,668 2.7% 44,484 2.6%
 土地 131,800 8.7% 134,400 8.6% 143,036 8.3%
 建物仮勘定 85,917 5.7% 22,015 1.4% 54,654 3.2%
 その他(純額) 9,038 0.6% 12,542 0.8% 13,499 0.8%
有形固定資産合計 352,060 23.3% 406,390 26.0% 485,877 28.1%
総資産合計 1,512,895   1,564,769   1,729,080  

 同社の有形固定資産の内訳を見てみると、定率法が適用されて減価償却費が多く計上できそうな勘定科目は機械装置及び運搬具(純額)ぐらいですが、総資産のわずか2.6%ほどしかありません。

 そのため、計上できる減価償却費が少なくなっているのかもしれません。

 

 

 

 

3.私の見解

 


 

 平成19年3月期は減収減益の業績予想を行っていますが、 今後のロボット需要のさらなく拡大に向けて積極的に設備投資を行っています。そのため、長期的にみれば業績は伸びると考えています。

 しかし、もっと多くの減価償却費を計上することはできないのかと思いました。そうすれば多くの費用を計上することができ、結果的にもっと多くのカネを会社に残すことができるはずです。

 4月27日の終値である23,560円で計算をすると、PERは33.17倍、PBRは3.12倍になっています。

 

 最後に、株式投資は自己責任でお願いします。

 

 

 

 

 - 業種別, 電気機器

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