材料株、エムアップ(3661)を分析してみる

   

 4月19日から突然株価が急騰し、多くの投資家に注目されている銘柄があります。それが、エムアップ(3661)です。

 同社はVR(仮想現実)事業を展開する新たな会社を設立する発表を行ったそうですが、それに多くの投資家に材料視され、株価が急騰したと思われます。

 そこで今回は、エムアップ(3661)のファンダメンタルズについて見ていきたいと思います。

 財務データをダウンロードする(Excel形式)

 

 

目 次

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 1-1.記事内容

 1-2.財務内容

 1-3.横ばい傾向の業績

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 2-1.事業の内容

 2-2.販売実績について

 2-3.モバイルコンテンツの市場規模について

 2-4.発行済株式総数、資本金等の推移について

 2-5.役員報酬等の額の決定に関する方針について

 2-6.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

  2-6-1.現金及び預金が増加

  2-6-2.建物(純額)が増加

  2-6-3.土地が増加

  2-6-4.投資キャッシュ・フローでは、財テクが中心

  2-6-5.財務キャッシュ・フローでは、配当金の支払いが中心

 2-7 気になる問題

  2-7-1.貸倒引当金について

  2-7-2.仕入債務のについて

  2-7-3.賞与引当金の減少

  2-7-4.貸付金について

3.私の見解

 

 

 

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 


 

 まずは最近発売された会社四季報(2018年2集 春号)から、同社のことについて大まかに見ていきます。

 

 

 

1-1.記事内容

 

 業績記事は、「EC委託販売切り替えによる売上目減りを乃木坂46、欅坂46の公式アプリで穴埋め。だが開発費膨らみ一転営業減益。19年3月期は公式アプリが通年寄与。柱の携帯コンテンツ配信は営業強化で新規ファンサイト開設増え堅調維持。営業益反発。」と来期からの業績に期待が持てそうな内容になっています。

 

 

 

1-2.財務内容

 

 自己資本比率は71.9%もあり、安全性は十分です。

 有利子負債はなく、無借金経営が行われています。

 資本金248百万円に対し、利益剰余金は1,677百万円もあります。

 

 

 

1-3.横ばい傾向の業績

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

15.3

(実績)

3,712 554 605 359 50.9
16.3

(実績)

3,736 397 371 226 30.4
17.3

(実績)

3,711 426 467 310 41.6
18.3

(予想)

3,800 400 400 265 35.4
19.3

(予想)

4,200 450 450 300 40.1

 2015年3月期から2017年3月期まで売上高はほぼ横ばい傾向ですが、利益は変動しています。

 2018年3月期以降は増収に転じるものの、利益は減益に転じる業績予想になっています。

 

 

 

 

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 


 

 続いて、有価証券報告書第13期(平成28年4年1日-平成29年3月31日)から詳しく見ていくことにします。

 

 

 

2-1.事業の内容

 

 同社は、携帯コンテンツ事業、PCコンテンツ事業、eコマース事業の3つの事業で構成されています。

セグメントの名称 事業内容
携帯コンテンツ事業 スマートフォン及びフィーチャーフォン向けの有料コンテンツの提供を行う。
PCコンテンツ事業 PC端末向けの有料コンテンツの提供を行う。
eコマース事業 インターネットを通じて主にアーティストグッズ及びCD等パッケージ商品の販売を行う。

 

 

 

2-2.販売実績について

 

セグメントの名称 売上高

(千円)

割合

(%)

携帯コンテンツ事業 2,976,472 80.2
PCコンテンツ事業 167,144 4.5
eコマース事業 435,476 11.7
その他 132,686 3 .6
合計 3,711,780  

 同社は携帯コンテンツ事業の売上高が最も高く、売上全体の80.2%を占めています。

 

 

 

2-3.モバイルコンテンツの市場規模について

 

 総務省の情報通信白書によると、スマートフォンやタブレット端末の普及に牽引され、モバイルコンテンツの市場規模は平成27年度に全体で1兆5,632億円(前年同期比7.3%増)となり、なお拡大が続いているそうです。

 

 

 

2-4.発行済株式総数、資本金等の推移について

 

  発行済株式総数増減数

(株)

発行済株式総数残高

(株)

資本金増減額

(千円)

平成25年1月1日

平成25年3月31日

197,600 6,724,800 13,320
平成25年4月1日

平成25年5月31日

14,800 6,739,600 1,665
平成25年6月1日

平成26年3月31日

227,600 6,967,200 19,885
平成26年4月1日

平成27年3月31日

478,000 7,445,200 35,313
平成27年4月1日

平成28年3月31日

4,800 7,450,000 549
平成28年4月1日

平成29年3月31日

12,400 7,462,400 1,413

 資本金の調達を目的に、毎年のように株式が発行されています。

 その結果、発行済株式総数残高はこの6年間で10.9%も増えています。

 この調子が毎年のように続くと、発行済株式総数は増え続け1株あたりの利益は希薄化をしていく恐れがあります。

 

 

 

2-5.役員報酬等の額の決定に関する方針について

 

 同社では各取締役の担当業務とその内容、経済情勢、従業員の給与額とのバランス等を考慮し、取締役会の決議により報酬額を決定しているそうです。

 

 

 

2-6.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

 

 次に、連結財務3表を分析して気になったポイントについて解説します。

 

2-6-1.現金及び預金が増加

 

 

 

H27.3.31

(千円)

割合

(%)

H28.3.31

(千円)

割合

(%)

H29.3.31

(千円)

割合

(%)

流動資産            
 現金及び預金 702,387 25.8% 751,759 28.0% 1,172,650 38.2%
総資産合計 2,727,483   2,683,473   3,069,153  

 平成29年3月期には現金及び預金が増加しています。

 連結キャッシュ・フロー計算書で確認をすると、営業キャッシュ・フローから資金を獲得したことに加え、投資有価証券を売却したことが要因で増えています。

 また同社は多くの現金及び預金を保有し、短期的な支払能力を表す当座比率は237%もあります(一般に、当座比率は100%あればよいと言われています)。

 

2-6-2.建物(純額)が増加

 

 

 

H27.3.31

(千円)

割合

(%)

H28.3.31

(千円)

割合

(%)

H29.3.31

(千円)

割合

(%)

有形固定資産            
 建物(純額) 103,491 3.8% 181,559 6.8% 209,163 6.8%
総資産合計 2,727,483   2,683,473   3,069,153  

 3期に渡り、建物(純額)が増加しています。

 有形固定資産等明細表で確認を行うと、平成28年3月期は保養所を取得したことに加え、移転新築を行ったことが要因で増加しています。

 平成29年3月期は本社の増床を新築したことが要因で増加しています。

 

2-6-3.土地が増加

 

 

 

H27.3.31

(千円)

割合

(%)

H28.3.31

(千円)

割合

(%)

H29.3.31

(千円)

割合

(%)

有形固定資産            
 土地 46,534 1.7% 53,420 2.0% 53,420 1.7%
総資産合計 2,727,483   2,683,473   3,069,153  

 平成28年3月期には土地が増加しています。

 有形固定資産等明細表で確認を行うと、新たに保養所の土地を取得したためです。

 

2-6-4.投資キャッシュ・フローでは、財テクが中心

 

 

 

H27.3.31

(千円)

H28.3.31

(千円)

H29.3.31

(千円)

投資キャッシュ・フロー ▲108,933 ▲155,585 211,224
投資有価証券の取得による支出 ▲51,177 ▲655,114 ▲106,350
投資有価証券の売却による収入 0 51,588 441,288
出資金の払込による支出 ▲50,360 0 0
出資金の回収による収入 0 120,360 0

 投資キャッシュ・フローでは、投資有価証券や出資金などによる財テクが中心になっています。

 3期分の連結損益計算書を確認しましたが、収支はプラスを保っていました。

 

2-6-5.財務キャッシュ・フローでは、配当金の支払いが中心

 

 

 

H27.3.31

(千円)

H28.3.31

(千円)

H29.3.31

(千円)

財務キャッシュ・フロー ▲64,584 ▲141,052 ▲150,541
配当金の支払額 ▲135,210 ▲148,150 ▲163,367

 財務キャッシュ・フローでは、多くの利益が配当金の支払いで消えています。

 

 

 

H27.3.31

(千円)

H28.3.31

(千円)

H29.3.31

(千円)

当期純利益 359,509 226,161 310,217
配当額 135,210 148,150 163,367
会社に残る利益 224,299 78,011 146,850

 そのため、会社には利益が半分も残っていません(逆に、多くの利益が株主に還元されているということになります)。

 

 

 

2-7 気になる問題

 

 さて、同社のファンダメンタルズを分析している中で気になる点もありました。そのことについても取り上げたいと思います。

 

2-7-1.貸倒引当金について

 

 

 

H27.3.31

(千円)

割合

(%)

H28.3.31

(千円)

割合

(%)

H29.3.31

(千円)

割合

(%)

売上高 3,712,293   3,736,311   3,711,780  
流動資産            
 貸倒引当金 ▲2,080 -0.1% ▲34,358 -1.3% ▲930 0.0%
総資産合計 2,727,483   2,683,473   3,069,153  

 売上高はほぼ横ばいであるにもかかわらず、貸倒引当金は増減しています。

 その結果、平成28年3月期は貸倒引当金組入額33,000千円の費用を計上し、平成29年3月期には貸倒引当金戻入額2,561千円の収益を計上しています。

 

2-7-2.仕入債務のについて

 

 

 

H27.3.31

(千円)

H28.3.31

(千円)

H29.3.31

(千円)

売上高 3,712,293 3,736,311 3,711,780
営業キャッシュ・フロー ▲902 346,009 352,845
 仕入債務の増減額(▲は減少) ▲483,022 ▲19,903 24,370

 営業キャッシュ・フロー計算書を確認すると、3期に渡って売上高はほぼ横ばいであるにもかかわらず平成27年3月期には仕入債務(買掛金)の支払いだけで483,022千円もの資金を使用しています。

 この金額はほかの勘定科目の増減と比較しても突出しており、流動負債の部に計上されている買掛金と比較しても不自然な金額です。

 

2-7-3.賞与引当金の減少

 

 

 

H27.3.31

(人)

H28.3.31

(人)

H29.3.31

(人)

従業員数 79 61 79

 平成29年3月期には従業員が増えています。

 

 

 

H27.3.31

(千円)

割合

(%)

H28.3.31

(千円)

割合

(%)

H29.3.31

(千円)

割合

(%)

流動負債            
 賞与引当金 39,368 1.4% 30,848 1.1% 13,859 0.5%
総資産合計 2,727,483   2,683,473   3,069,153  

 にもかかわらず、賞与引当金は減少しています。

 連結損益計算書を確認すると賞与引当金3,965千円分が戻入され、結果的に販売費・一般管理費はわずかに減少しています。その点が少し気になります。

※ 販売費・一般管理費の主な減少要因は、広告宣伝費の減少が中心になっています。

※ 役員への報酬は逆に増えていました。

 

2-7-4.貸付金について

 

 

 

H27.3.31

(千円)

割合

(%)

H28.3.31

(千円)

割合

(%)

H29.3.31

(千円)

割合

(%)

売上高 3,669,363   3,731,343   3,572,994  
流動資産            
 短期貸付金 0 0.0% 68,420 2.5% 37,990 1.3%
 貸倒引当金 ▲2,080 -0.1% ▲34,358 -1.3% ▲930 0.0%
投資その他の資産            
 長期貸付金 35,358 1.3% 31,833 1.2% 84,699 2.8%
 貸倒引当金 ▲35,358 -1.3% ▲31,833 -1.2% ▲62,311 -2.1%
総資産合計 2,743,330   2,688,341   3,003,502  

 単独貸借対照表も確認しましたが、短期貸付金と長期貸付金が計上され、総資産の4.1%も占めています。

 余剰資金を活用しているのかもしれませんが、総資産の4.1%も占めているのは計上額としては多い気がします。

 貸付先は顧客に対するもののようですが、詳しい説明は特にありませんでした。

 また、この貸付金に伴って計上されている貸倒引当金についてですが、貸付金は売上高と連動しているわけではないので調整の余地が大きいように感じられます。

 

 

 

3.私の見解

 


 

 多くの現金及び預金を保有し、当座比率も高くて財務体質に優れた会社です。

 また、拡大が続くモバイルコンテンツ市場でビジネスを展開していることについても魅力を感じました。

 しかしファンダメンタルズについて詳しく見てみると、貸倒引当金や賞与引当金などを利用して利益調整を行っている会社のように感じます。

 また多くの配当金を支払っているにも関わらず、新たに株式を発行して資金調達を行っている点についても矛盾を感じます。

 4月20日の終値である1,640円で計算をすると、PERは39.52倍、PBRは5.49倍になっていました。

 

 最後に、株式投資は自己責任でお願いします。

 

 

 

 

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