増収増益株、昭和電工(4004)を分析してみる

   

 平成30年2月14日に昭和電工(4004)の決算発表がありました。

 これによると、平成29年12月期の売上高は対前年比で16.3%の増収、利益は対前年比で2.7倍の増益になっています。

 配当金についても1株あたり50円から70円の増配を予定しています。

 さらに平成30年12月期の連結業績予想の売上高は15.3%の増収、利益は94%の増益予想を発表しています。

 (平成29年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

 最近では、中国・上海市に電池材料を販売する子会社を設立したことで再び多くの投資家に注目を浴びています。

 そこで今回は、昭和電工(4004)のファンダメンタルズについて見ていきたいと思います。

 財務データをダウンロードする(Excel形式)

 

 

目 次

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 1-1.記事内容

 1-2.財務内容

 1-3.減収減益傾向の業績

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 2-1.事業の内容

 2-2.販売実績について

 2-3.平成30年に目標とする経営指標

 2-4.地域ごとの売上高

 2-5.経営上の重要な契約について

 2-6.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

  2-6-1.現金及び預金が増加

  2-6-2.投資有価証券が増加

  2-6-3.機械装置及び運搬具(純額)が増加

  2-6-4.修繕引当金の計上

  2-6-5.事業構造改善引当の計上

  2-6-6.現金の裏付けがある利益をしっかり確保

  2-6-7.財務キャッシュ・フローでは、有利子負債の返済が中心

 2-7 気になる問題

  2-7-1.貸倒引当金の計上

  2-7-2.債務保証損失引当金の計上

  2-7-3.有形固定資産の償却方法

3.私の見解

 

 

 

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 


 

 まずは最近発売された会社四季報(2018年2集 春号)から、同社のことについて大まかに見ていきます。

 

 

 

1-1.記事内容

 

 業績記事は、「石油化学は市況高ながら定期修繕で数量減。ただ情報電子化学品は数量増。黒鉛電極事業も前期買収が寄与のうえ価格改定奏功。決算遅延影響なく、70円配。」と全体的に好調といえる内容です。

 

 

 

1-2.財務内容

 

 自己資本比率は34.0%と、少し安全性に不安が残ります。

 有利子負債は346,725百万円、総資産の33.8%程を占めています。

 資本金140,564百万円に対し、利益剰余金は96,142百万円しかありません。

 

 

 

1-3.減収減益傾向の業績

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

13.12

(実績)

847,803 25,953 23,488 9,065 60.6
14.12

(実績)

872,785 20,551 21,731 2,929 19.9
15.12

(実績)

775,732 33,508 32,050 921 6.4
16.12

(実績)

671,159 42,053 38,690 12,305 86.3
17.12

(実績)

780,387 77,818 63,962 33,470 234.8
18.12

(予想)

900,000 110,000 106,000 65,000 456.1
19.12

(予想)

960,000 120,000 116,000 70,000 491.1

 2013年12月期から2016年12月期までは減収減益傾向の業績が続いていましたが、それでも黒字を確保しています。

 そして、2017年12月期は大幅に業績が回復をして増収増益に転じています。

 2018年12月期以降も、増収増益の業績予想になっています。

 

 

 

 

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 


 

 続いて、有価証券報告書第109期(平成29年1年1日-平成29年12月31日)から詳しく見ていくことにします。

 

 

 

2-1.事業の内容

 

 同社は、石油化学、化学品、セラミックス、アルミ、LED、化合物半導体、黒鉛電極など幅広い事業を展開しています。

セグメントの名称 事業内容
石油化学 オレフィン、有機化学品、合成樹脂等の製造・販売を行っている。
化学品 機能性化学品、産業ガス、基礎化学品、情報電子化学品等の製造・販売を行っている。
エレクトロニクス ハードディスク、化合物半導体、レアアース磁石合金、リチウムイオン電池材料等の製造・販売を行っている。
無機 黒鉛電極、セラミックス、ファインセラミックス等の製造・販売を行っている。
アルミニウム コンデンザー用高純度箔、レーザービームプリンター用シリンダー、押出品、鍛造品、熱交換器、飲料用缶等の製造・販売を行っている。
その他 卸売、建材等の製造・販売を行っている。

 

 

 

2-2.販売実績について

 

セグメントの名称 売上高

(百万円)

割合

(%)

石油化学 251,128 32.2
化学品 148,758 19.1
エレクトロニクス 123,064 15.8
無機 73,442 9.4
アルミニウム 105,439 13.5
その他 133,624 17.1
調整額 ▲55,067 ▲7.1
合計 780,387  

 同社では石油化学事業の売上高が最も高く、売上全体の32.2%を占めています。

 なお対前値比で最も売上高が伸びているのは、黒鉛電極の製造・販売を行っている無機事業です。

 

 

 

2-3.平成30年に目標とする経営指標

 

  平成30年中計目標
売上高 8,550億円
営業利益 570億円
売上高営業利益率 6.7%
FCF(フリー・キャッシュ・フロー) 680億円
ROA(総資産営業利益率) 6.0%
ROE 9.0%
D/Eレシオ 1.00倍

 同社では連結中期経営計画「Project 2020+」において、売上高8,550億円、営業利益570億円などとする目標を立てています。

 

 

 

2-4.地域ごとの売上高

 

  売上高

(百万円)

比率

(%)

日本 504,162 64.6
アジア 230,644 29.6
その他 45,580 5.8
売上高合計 780,387  

 同社は日本以外の地域でも販売を行っており、海外での売上高は全体の35.4%を占めています。

 

 

 

2-5.経営上の重要な契約について

 

相手先 内容 摘要
(サウジアラビア)

ナマケミカルズ社

アリルアルコールの製造技術 (対価)

一定金額を分割払いで受け取る。

(有効期間)

平成23年1月31日から12年間

 同社は、ナマケミカルズ社と技術提携に関する契約を結んでいます。

 

 

 

2-6.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

 

 次に、連結財務3表を分析して気になったポイントについて解説します。

 

2-6-1.現金及び預金が増加

 

 

 

H27.12.31

(百万円)

割合

(%)

H28.12.31

(百万円)

割合

(%)

H29.12.31

(百万円)

割合

(%)

流動資産            
 現金及び預金 64,054 6.8% 69,914 7.5% 77,248 7.5%
総資産合計 940,494   932,697   1,024,729  

 3期に渡り、現金及び預金が増加しています。

 連結キャッシュ・フロー計算書で確認をすると、有形固定資産の取得や有利子負債の返済等で資金を使用したものの、営業キャッシュ・フローから十分な資金を獲得したことが要因で現金及び預金が増えています。

 

2-6-2.投資有価証券が増加

 

 

 

H27.12.31

(百万円)

割合

(%)

H28.12.31

(百万円)

割合

(%)

H29.12.31

(百万円)

割合

(%)

投資その他の資産            
 投資有価証券 76,568 8.1% 74,951 8.0% 89,167 8.7%
総資産合計 940,494   932,697   1,024,729  

 平成29年12月期には投資有価証券が増加しています。

 これは、黒鉛電極事業を営む昭和電工カーボン・ホールディングGmbH(旧:SGL GE Holding GmbH)とその子会社10社の株式を取得したためです。

 現在、中国政府の影響で黒鉛電極は需給が逼迫しています。

 そのため、黒鉛電極事業にビジネスチャンスがあるとにらんで買収を行ったのではないかと考えられます。

 

2-6-3.機械装置及び運搬具(純額)が増加

 

 

 

H27.12.31

(百万円)

割合

(%)

H28.12.31

(百万円)

割合

(%)

H29.12.31

(百万円)

割合

(%)

有形固定資産            
 機械装置及び運搬具(純額) 112,940 12.0% 110,213 11.8% 151,634 14.8%
総資産合計 940,494   932,697   1,024,729  

 平成29年12月期には機械装置及び運搬具(純額)が増加しています。

 増加要因について主要な設備の状況で確認をすると、主に黒鉛電極製造を行っている在外子会社に対する設備の投資を行ったためです。

 

2-6-4.修繕引当金の計上

 

 

 

H27.12.31

(百万円)

割合

(%)

H28.12.31

(百万円)

割合

(%)

H29.12.31

(百万円)

割合

(%)

流動負債            
 修繕引当金 62 0.0% 38 0.0% 4,143 0.4%
総資産合計 940,494   932,697   1,024,729  

 平成29年12月期には修繕引当金が4,143百万円も計上されています。

 同社は今後、国内外で49,000百万分の設備の増強、合理化、維持更新等の計画があるそうです。

 そのための引当金を計上したと考えられます。

 

2-6-5.事業構造改善引当の計上

 

 

 

H27.12.31

(百万円)

割合

(%)

H28.12.31

(百万円)

割合

(%)

H29.12.31

(百万円)

割合

(%)

固定負債            
 事業構造改善引当金 475 0.1% 1,121 0.1% 3,574 0.3%
総資産合計 940,494   932,697   1,024,729  

 3期に渡り、事業構造改善引当金が増加しています。

 現在、中期経営計画「Project 2020+」に基づいて事業構造の変革を進めているそうです。

 その構造改革で発生する費用や損失に備えるための引当金だと考えられます。

 

2-6-6.現金の裏付けがある利益をしっかり確保

 

 当期純利益と営業キャッシュ・フロー利益要素の差額について見てみると・・・

 

 

 

H27.12.31

(百万円)

H28.12.31

(百万円)

H29.12.31

(百万円)

営業キャッシュ・フロー利益要素 45,419 61,532 92,370
当期純利益 921 12,305 33,470
差額 44,498 49,227 58,900

 と、しっかりキャッシュの裏付けがある黒字を確保していることが確認できました。

 

2-6-7.財務キャッシュ・フローでは、有利子負債の返済が中心

 

 

 

H27.12.31

(百万円)

H28.12.31

(百万円)

H29.12.31

(百万円)

財務キャッシュ・フロー ▲21,336 ▲13,220 ▲18,370
短期借入の純増減額
(▲は減少)
▲1,287 ▲242 19,921
コマーシャル・ペーパーの純増減額(▲は減少) 7,000 ▲7,000 0
長期借入れによる収入 50,240 42,288 22,328
長期借入金の返済による支出 ▲71,006 ▲49,273 ▲44,813
社債の発行による収入 10,000 17,000 0
社債の償還による支出 ▲10,000 ▲10,000 ▲10,000

 財務キャッシュ・フローでは、有利子負債の返済が中心になっています。

 

 

 

H27.12.31

(百万円)

割合

(%)

H28.12.31

(百万円)

割合

(%)

H29.12.31

(百万円)

割合

(%)

流動負債            
 短期借入金 69,000 7.3% 66,895 7.2% 86,699 8.5%
 1年内返済予定の長期借入金 49,386 5.3% 48,234 5.2% 57,432 5.6%
 コマーシャル・ペーパー 12,000 1.3% 5,000 0.5% 5,000 0.5%
 1年内償還予定の社債 10,000 1.1% 10,000 1.1% 0 0.0%
固定負債            
 社債 35,000 3.7% 42,000 4.5% 42,000 4.1%
 長期借入金 193,449 20.6% 187,800 20.1% 155,594 15.2%
有利子負債合計 368,835 39.2% 359,929 38.6% 346,725 33.8%
総資産合計 940,494   932,697   1,024,729  

 その結果、平成27年12月期には368,835百万円あった有利子負債は、平成29年12月期には346,725百万円にまで減少しています。

 

 

 

2-7 気になる問題

 

 さて、同社のファンダメンタルズを分析している中で気になる問題もありました。そのことについても取り上げたいと思います。

 

2-7-1.貸倒引当金の計上

 

 

 

H27.12.31

(百万円)

割合

(%)

H28.12.31

(百万円)

割合

(%)

H29.12.31

(百万円)

割合

(%)

流動資産            
 貸倒引当金 ▲880 -0.1% ▲699 -0.1% ▲2,849 -0.3%
総資産合計 940,494   932,697   1,024,729  

 平成29年12月期には貸倒引当金が▲2,849百万円計上されています。

 これは、関係会社であるPT・インドネシア・ケミカル・アルミナ(出資比率20%)に対するもので、同社債権に対して貸倒引当金を計上したためです。

 

2-7-2.債務保証損失引当金の計上

 

 

 

H27.12.31

(百万円)

割合

(%)

H28.12.31

(百万円)

割合

(%)

H29.12.31

(百万円)

割合

(%)

固定負債            
 債務保証損失引当金 0 0.0% 0 0.0% 2,640 0.3%
総資産合計 940,494   932,697   1,024,729  

 平成29年12月期には債務保証損失引当金が計上されています。

 これも、関係会社であるPT・インドネシア・ケミカル・アルミナ(出資比率20%)に対するもので、返済予定であった借入期を返済していない状況になっています。

 その債務保証に係る損失に備えるための引当金です。

 

2-7-3.有形固定資産の償却方法

 

 一般に、有形固定資産の償却方法では多くの会社が定率法を採用しています。なぜなら、その方が最初で多くの費用を計上できるため節税に効果があるからです。

 しかし同社の場合は、毎年一定額で費用計上を行う定額法を採用しています。

 

 

 

3.私の見解

 


 

 同社の場合有利子負債の返済に努めて財務体質の強化に力をいれてきたことや、将来の損失にそなえてきちんと引当金を計上していることから、きちんと経営がされているという印象を受けました。

 きっと、新しく設立した中国の子会社の経営もうまくやっていくことでしょう。また、黒鉛電極事業を営む新たな子会社も将来的には業績に大きく貢献をすることに期待したいと思います。

 ただ、設備が多いにもかかわらず有形固定資産の償却方法が定額法を採用していることには残念に思いました。

 もし定率法を採用していれば多くの費用を計上することができ、結果的に会社には多くのカネを残すことができたでしょう。

 4月19日の終値である3,895円で計算をすると、PERは8.54倍、PBRは1.59倍になっていました。

 

 最後に、株式投資は自己責任でお願いします。

 

 

 

 

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