割安株、イノテック(9880)での失敗談について

      2018/04/08

 今回は2012年7月に投資を行った会社、イノテック(9880)の失敗談に関する記事です。

 会社四季報(2012年3集 夏号)では、PER7.8倍、PBR0.30倍と割安であったことから株を購入しました。

 しかし購入後、値下がりをしていく株価へのストレスに耐えられなくなり、結果的には損切を行ってしまったのです。

 財務データをダウンロードする(Excel形式)

 

 

目 次

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 1-1.記事内容

 1-2.財務内容

 1-3.売上高が減収傾向

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 2-1.事業の内容

 2-2.販売実績について

 2-3.地域ごとの売上高

 2-4.経営上の重要な契約について

 2-5.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

  2-5-1.たな卸資産回転比率が改善

  2-5-2.現金及び預金が増えている

  2-5-3.財務キャッシュ・フローでは、有利子負債の返済が中心

  2-5-4.営業利益率が改善

  2-5-5.自己株式の消去

 2-6.気になる問題

  2-6-1.売上債権回転比率が低い

  2-6-2.前渡金と前受金について

  2-6-3.建物及び構築物(純額)と土地について

3.2012年7月に株を取得

4.現在の株価と業績

 

 

 

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 


 

 では、当時の会社四季報(2012年3集 夏号)から会社のチェックポイントについて解説していきます。

 

 

 

1-1.記事内容

 

 業績記事は、「電子デバイスはインテル製チップ搭載ボードが、上位チップ搭載で組込み用に出荷伸長。ケイデンス製設計ツールも堅調。が、好採算のフラッシュテスター出荷半減とテレビ用電子部品の縮減痛い。受託設計低調で人件費負担増。営業減益。」とネガティブよりの内容になっています。

 

 

 

1-2.財務内容

 

 自己資本比率は81.1%もあり、安全性は十分です。

 有利子負債はなく、無借金経営が行われています。

 資本金10,517百万円に対し、利益剰余金は4,395百万円しかありませんでした。

 

 

 

1-3.売上高が減収傾向

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

08.3

(実績)

52,836 3,332 3,237 1,564 67.6
09.3

(実績)

30,018 1,230 1,218 475 21.8
10.3

(実績)

24,492 613 740 170 9.1
11.3

(実績)

25,882 1,455 1,532 769 44.0
12.3

(実績)

25,181 1,554 1,685 745 42.6
13.3

(予想)

26,500 1,250 1,350 850 48.6
14.3

(予想)

28,000 1,300 1,400 900 51.4

 2008年3月期の売上高をピークに、減収が続いています。そして、2012年3月期にはピークの半分ほどしかありません。

 しかし、毎年黒字を確保しています。すばらしいですね。

 

 

 

 

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 


 

 続いて、有価証券報告書第26期(平成23年4年1日-平成24年3月31日)から詳しく見ていくことにします。

 

 

 

2-1.事業の内容

 

 この会社では、半導体設計及び電子部品に係る製品や商品の開発、販売を主に行い、また各事業に関連する物流管理・市場調査等の事業活動を行っています。

 

セグメントの名称 事業内容
半導体設計事業 主に米国ケイデンス社製半導体設計用(EDA)ソフトウェアの輸入販売、自社開発の半導体テストシステムの開発、販売を行っている。その他に当社エンジニアリングによるASIC(特定用途向け集積回路)の受託開発なども行っている。

また、主にLSIの受託設計及び人材派遣による設計支援を行っている。

電子部品事業 主に日立GST社製ハードディスクドライブや米国シリコンイメージ社製HDMIチップ等、お客様のニーズに応じた各種半導体デバイスの販売を行っており、そのほかに組込み用途向けCPUボードの開発、販売も行っている。

また、組み込み用途向けのOSやブラウザ等のソフトウェア販売及び受託開発を行っている。

 

 

 

2-2.販売実績について

 

セグメントの名称 売上高

(千円)

割合

(%)

半導体設計事業 13,687,801 54.4
電子部品事業 11,493,928 45.6
合計 25,181,730  

 販売実績は半導体設計事業が54.4%、電子部品事業が45.6%とバランスのよい売上高構成になっています。

 

 

 

2-3.地域ごとの売上高

 

  売上高

(千円)

比率

(%)

日本 18,765,352 74.5
中国 4,048,161 16.1
その他 2,368,216 9.4
売上高合計 25,181,730  

 この会社では外国でも販売を行っており、売上高比率は25.5%になっています。

 

 

 

2-4.経営上の重要な契約について

 

相手先 契約内容 契約期間
ケイデンス・デザイン・システムズ・リミテッド及びケイデンス・デザイン・システムズ(ジャパン)ビー・ヴィ 代理店契約 自 平成23年 1月 1日

至 平成29年12月31日

日立グローバル・ストレージ・テクノロジーズ・シンガポール ピー・ティ・イー リミテッド 代理店契約 平成13年6月19日から継続中

 この会社では、半導体設計用ソフトウェアとハードディスクドライブの代理店に関する契約を海外企業2社と結んでいます。

 また代理店契約に関し、当該企業が日本で直接販売活動を行った場合や、商権獲得を目的に保有している株式の投資リスクなどを挙げています。

 

 

 

2-5.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

 

 次に、連結財務3表を分析して気になったポイントについて解説します。

 

2-5-1.たな卸資産回転比率が改善

 

 

 

H22.3.31

(回転)

H23.3.31

(回転)

H24.3.31

(回転)

たな卸資産回転比率 4.73 6.04 9.26

 平成22年3月期の4.73回転から、平成24年3月期には9.26回転にまでたな卸資産回転比率が改善しています。

 

2-5-2.現金及び預金が増えている

 

 

 

H22.3.31

(千円)

割合

(%)

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

H24.3.31

(千円)

割合

(%)

流動資産            
 現金及び預金 2,324,926 8.3% 3,250,942 11.8% 3,470,444 12.8%
総資産合計 27,863,935   27,501,753   27,042,987  

 3期に渡り、現金及び預金が増えています。

 連結キャッシュ・フロー計算書で確認をすると、いずれも営業キャッシュ・フローから十分な資金を得られたことが主な要因です。

 

2-5-3.財務キャッシュ・フローでは、有利子負債の返済が中心

 

 

 

H22.3.31

(千円)

H23.3.31

(千円)

H24.3.31

(千円)

財務キャッシュ・フロー ▲2,390,661 ▲1,676,250 ▲1,269,841
短期借入の純増減額
(▲は減少)
500,000 ▲800,000 ▲1,000,000
長期借入金の返済による支出 ▲1,410,000 ▲750,000 0

 財務キャッシュ・フローでは、有利子負債の返済が中心になっています。

 

 

 

H22.3.31

(千円)

割合

(%)

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

H24.3.31

(千円)

割合

(%)

流動負債            
 短期借入金 2,550,000 9.2% 1,000,000 3.6% 0 0.0%
有利子負債合計 2,550,000 9.2% 1,000,000 3.6% 0 0.0%
総資産合計 27,863,935   27,501,753   27,042,987  

 そのため、有利子負債合計が2,550,000千円から平成24年3月期にはなくなっています。

 

2-5-4.営業利益率が改善

 

 

 

H22.3.31

(%)

H23.3.31

(%)

H24.3.31

(%)

営業利益率 2.5 5.6 6.2

 営業利益率が2.5%から、6.2%にまで改善しています。

 また、営業キャッシュ・フローでも多くの資金を稼いでいる印象を受けましたが、その秘密がこの利益率の高さにありそうです。

 

2-5-5.自己株式の消去

 

 

 

H22.3.31

(株)

割合

(%)

H23.3.31

(株)

割合

(%)

H24.3.31

(株)

割合

(%)

自己株式数 5,728,700 24.7% 5,728,700 24.7% 715,200 3.9%
発行済株式数 23,218,901   23,218,901   18,218,901  

 平成24年3月期には5,000千株余り(額にして、19.7億円)の自己株式を消去しています。

 これによって、発行済株式総数は18,218千株にまで減少しています。

 一般に、自己株式の消却を行えば1株あたりの価値があがるので、投資家にとっては歓迎すべきことです

 しかし、時価総額69.0億円の会社にしてはあまりにも大きな消去額です。その点が少し気になります。

 

 

 

2-6.気になる問題

 

 さて、ここでいくつか気になる問題がありました。そのことについても触れたいと思います。

 

2-6-1.売上債権回転比率が低い

 

 

 

H22.3.31

(回転)

H23.3.31

(回転)

H24.3.31

(回転)

売上債権回転比率 3.29 3.50 2.95

 売上債権回転比率が2.95回転しかありません。

 売掛金の主な相手先について調べてみると、関連会社に対して1,705,964円もありました。

 関連会社を利用して売上高の水増しを行っているのではないでしょうか?

 

2-6-2.前渡金と前受金について

 

 

 

H22.3.31

(千円)

割合

(%)

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

H24.3.31

(千円)

割合

(%)

流動資産            
 前渡金 2,897,985 10.4% 1,772,116 6.4% 1,533,251 5.7%
流動負債            
 前受金 1,500,177 5.4% 1,165,520 4.2% 947,492 3.5%
総資産合計 27,863,935   27,501,753   27,042,987  

 前渡金が総資産の5.7%もありますが、ここまで多いのは普通ではありません。

 しかし、負債の部に前受金が計上されています。これが、前渡金の調達先になっているのでしょうか? 気になるところです。

 

※ 前渡金とは、仕入品などを受取る前に先に支払った代金などのことです。

※ 前受金とは手付金や内金といったようなもので、商品の仕入れや販売の際に商品代金の一部を先に支払ったり受け取ったりしたときに使用する勘定科目です。

 

2-6-3.建物及び構築物(純額)と土地について

 

 

 

H22.3.31

(千円)

割合

(%)

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

H24.3.31

(千円)

割合

(%)

有形固定資産            
 建物及び構築物(純額) 4,685,008 16.8% 4,504,689 16.4% 4,240,292 15.7%
 土地 5,687,498 20.4% 5,672,632 20.6% 5,668,131 21.0%
有形固定資産合計 10,372,506 37.2% 10,177,321 37.0% 9,908,423 36.6%
総資産合計 27,863,935   27,501,753   27,042,987  

 この会社は、主に半導体設計や電子部品に係る製品商品の開発、販売を行っています。

 そのため大きな設備は必要ないと思いますが、建物及び構築物(純額)と土地が総資産の36.6%も占めています。

 過剰設備になっていないでしょうか?

 

 

 

 

3.2012年7月に株を取得

 


 

 これまで見てきたように、この会社にはいくつかの問題も含んでいました。

 しかし当時は株式投資が好調であったため、さらに儲けたいという欲望を抑えることができず、2012年7月には1株平均353円で購入をしました。

 しかし私が株を購入した後も株価の値下がりが続き、ものすごいストレスを感じました。

 そのとき、これまで取り上げたように関係会社に対する売掛金の高さや過剰設備の懸念など、何らかの問題でインサイダーが株を売っているのかもしれないという疑念を持ち始めたのです。

 そのため、2012年11月には1株平均321円で売却を行いました。

 

 

 

 

4.現在の株価と業績

 


 

 こちらが、現在の株価です。

 

 私が2012年11月に売った321円が底値付近になり、そこから横ばいトレンドが続いています。

 しかし2016年10月になると本格的な上昇トレンドが続き、2018年3月には1,485円の高値をつけています。

 最近発売された会社四季報(2018年2集 春号)では、PERは30.6倍、PBRは0.93倍と割高な水準になっています。

 

 そして業績は・・・

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

15.3

(実績)

26,483 722 938 553 31.5
16.3

(実績)

31,243 1,012 1,162 740 42.1
17.3

(実績)

28,863 999 1,251 806 45.9
18.3

(予想)

28,500 1,100 1,150 730 41.8
19.3

(予想)

29,000 1,500 1,600 1,100 62.9

 売上高はあまり伸びているようには感じません。また、利益もあまり伸びていないように感じます。

 本格的な増収増益は2019年3月期を予想しています。

 

 最後に、株式投資は自己責任でお願いします。

 

 

 

 

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