割安株、石井工作研究所(6314)での失敗談について

      2018/04/08

 今回は2012年2月に投資を行った会社、石井工作研究所(6314)での失敗談に関する記事です。

 当時の会社四季報(2012年1集 新春号)では、来期のPER18.8倍、PBR0.25倍の割安な水準で売られていました。

 株式を購入後、会社のファンダメンタルズについて詳しく調べてみると赤字業績が続いているにも関わらず、役員の利益を中心にした経営などが行われていました。

 しかし、会社四季報(2012年1集 新春号)の業績黒字化予想を鵜呑みにして投資を行い、そして後に損切をする羽目になってしまいました。

 財務データをダウンロードする(Excel形式)

 

 

目 次

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 1-1.記事内容

 1-2.財務内容

 1-3.赤字続きの業績

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 2-1.売上高が年々減少

 2-2.事業の内容

 2-3.販売実績

 2-4.地域ごとの売上高

 2-5.財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

  2-5-1.現金及び預金について

  2-5-2.投資不動産について

  2-5-3.投資有価証券について

  2-5-4.配当金の支払いについて

 2-6 気になる問題

  2-6-1.売上債権回転比率が低い

  2-6-2.たな卸資産回転比率が低い

  2-6-3.総資産回転比率が低い

  2-6-4.閉鎖中の土地について

  2-6-5.土地の購入について

  2-6-6.役員退職慰労引当金について

  2-6-7.高い役員報酬

  2-6-8.営業キャッシュ・フロー利益要素が赤字

3.2012年2月に株を取得

4.現在の株価と業績

 

 

 

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 


 

 では、当時の会社四季報(2012年1集 新春号)から、会社のチェックポイントについて解説していきます。

 

 

 

1-1.記事内容

 

 業績記事は、「主力の半導体装置はアジア設備投資先送りから低調。円高で海外向け価格下げ圧力強く原価率悪化。部品内製化と人件費削減も限界。赤字継続。13年3月期は採算よい国内半導体装置復調し黒字化。」と、業績回復にはまだ時間がかかりそうな内容になっています。

 

 

 

1-2.財務内容

 

 自己資本比率は84.3%もあり、安全性は十分です。

 有利子負債はなく、無借金経営が行われています。

 資本金1,186百万円に対し、利益剰余金は1,676百万円です。

 現金同等物19.9億円を保有しているこの会社の時価総額は、14.0億円です。

 また、大株主には創業者一族が4人含まれています。

 

 

 

1-3.赤字続きの業績

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

07.3

(実績)

5,001 890 903 326 42.0
08.3

(実績)

4,966 849 845 475 61.2
09.3

(実績)

3,194 ▲28 ▲6 ▲154 ▲19.9
10.3

(実績)

1,700 ▲862 ▲851 ▲886 ▲114.0
11.3

(実績)

2,513 ▲195 ▲113 ▲118 ▲15.3
12.3

(予想)

3,000 ▲165 ▲125 ▲95 ▲12.2
13.3

(予想)

3,500 100 120 75 9.6

 2010年3月期まで売上高の減収が続き、それに伴って2009年3月期からは赤字業績が続いています。

 2012年3月期も赤字業績ですが、2013年3月期からは黒字化を予想しています。

 

 

 

 

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 


 

 続いて、有価証券報告書第33期(平成22年4年1日-平成23年3月31日)から詳しく見ていくことにします。

 

 

 

2-1.売上高が年々減少

 

  平成19年3月 平成20年3月 平成21年3月 平成22年3月 平成23年3月
売上高
(千円)
5,001,093 4,966,043 3,194,992 1,700,346 2,513,026
当期純利益又は当期純損失(▲)
(千円)
326,790 475,796 ▲154,897 ▲886,173 ▲118,726
総資産額
(千円)
8,807,806 8,593,472 7,828,186 6,963,375 6,930,718
従業員数
(名)
267 275 274 275 267

 売上高の減収により、赤字業績が平成21年3月期から続いています。

 また、不採算事業の整理縮小のためだと思われますが、総資産額も減少しています。しかし、従業員数は減少していません。

 この会社では優秀な従業員を確保しておく必要があるため、終身雇用を前提に福利厚生面などできめ細かく対応をしているそうです。

 そのために従業員のリストラは行っていないのかもしれません。

 

 

 

2-2.事業の内容

 

 この会社では半導体関連事業を主事業とし、他には不動産事業や浄水事業が行われています。

 

セグメントの名称 事業内容
半導体事業 半導体関連製造装置及び金型、加工部品、その他
その他 不動産・建築関係事業、浄水事業

 

 

 

2-3.販売実績

 

セグメントの名称 販売高

(千円)

割合

(%)

半導体関連事業 2,452,394 97.6
その他 60,632 2.4
合計 2,513,026  

 この会社では、半導体関連事業が売上高のほぼ100%を占めています。

 

相手先 販売高

(千円)

割合

(%)

第一実業(株) 527,699 21.0

 また、主な販売先は第一実業(株)になっており、売上全体の21.0%を占めています。

 

 

 

2-4.地域ごとの売上高

 

  売上高

(千円)

比率

(%)

日本 1,959,319 78.0
アジア 553,707 22.0
売上高合計 2,513,026  

 この会社では、日本以外にアジアでも販売を行っています。

 

 

 

2-5.財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

 

 次に、財務3表を分析して気になったポイントについて触れていきます。

 

2-5-1.現金及び預金について

 

 

 

H21.3.31

(千円)

割合

(%)

H22.3.31

(千円)

割合

(%)

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

流動資産            
 現金及び預金 2,369,369 30.3% 1,771,768 25.4% 1,986,032 28.7%
総資産合計 7,828,177   6,963,363   6,930,707  

 現金及び預金が増減しています。

 キャッシュ・フロー計算書で確認をすると、平成22年3月期は大幅な赤字業績に陥ったことに加え、有形固定資産と投資有価証券の取得で資金を使用したことが要因で現金及び預金が減っています。

 平成23年3月期は営業キャッシュ・フローから資金を得られたことに加え、投資不動産の売却を行ったことが要因で現金及び預金が増えています。

 

2-5-2.投資不動産について

 

 

 

H21.3.31

(千円)

割合

(%)

H22.3.31

(千円)

割合

(%)

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

売上高            
流動資産            
 販売用不動産 120,000 1.5% 0 0.0% 0 0.0%
投資その他の資産            
 投資不動産 0 0.0% 103,000 1.5% 38,104 0.5%
総資産合計 7,828,177   6,963,363   6,930,707  

 平成22年3月期から販売用不動産がなくなり、新たに投資不動産が計上されています。

 おそらく販売用不動産として売れる見込みがないため、投資不動産として会社で活用するようにしたのではないかと考えます。

 平成23年3月期には投資不動産が減少しています。

 損益計算書で確認をすると、売却をしたことが要因で減っていました。

 

2-5-3.投資有価証券について

 

 

 

H21.3.31

(千円)

割合

(%)

H22.3.31

(千円)

割合

(%)

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

投資その他の資産            
 投資有価証券 167,203 2.1% 321,874 4.6% 286,668 4.1%
総資産合計 7,828,177   6,963,363   6,930,707  

 投資有価証券が増減しています。

 貸借対照表やキャッシュ・フロー計算書で確認を行うと、平成22年3月期は保有銘柄の時価総額が上昇したことに加え、新たに投資有価証券を取得したことが要因で投資有価証券が増えています。

 平成23年3月期は保有銘柄の時価総額が下落したことに加え、保有していた投資有価証券を売却したことが要因で投資有価証券が減っていました。

 

2-5-4.配当金の支払いについて

 

 

 

H21.3.31

(千円)

H22.3.31

(千円)

H23.3.31

(千円)

財務キャッシュ・フロー ▲117,326 ▲77,367 ▲183
配当金の支払額 ▲116,812 ▲77,433 ▲194

 平成23年3月期から配当金がほとんど支払われなくなっています。

 赤字業績が続いているため、配当金の支払いがなくなったと考えられます。

 

 

 

2-6 気になる問題

 

 さてこの会社の場合、気になる問題が多数ありました。それについても取り上げたいと思います。

 

2-6-1.売上債権回転比率が低い

 

 

 

H21.3.31

(回転)

H22.3.31

(回転)

H23.3.31

(回転)

売上債権回転比率 3.50 1.78 2.82

 売上債権回転比率が2.82回転しかありません。また、売掛金の滞留期間(一般に、製造業や卸売業の場合は60日から80日だといわれています)は127.22日もあります。

 この会社の場合、現金及び預金だけで総資産の28.7%もあるので資金繰りは楽だと考えられます。

 しかし売上債権の滞留期間がここまで長いと会社の与信管理がきちんと機能しているのか、疑問が生まれます。

 

2-6-2.たな卸資産回転比率が低い

 

 

 

H21.3.31

(回転)

H22.3.31

(回転)

H23.3.31

(回転)

たな卸資産回転比率 3.67 3.15 4.04

 一般に、製造業のたな卸資産回転比率は10回転といわれています。

 しかしこの会社の場合、4.04回転しかありません。

 たな卸資産回転比率が低い要因は、売上高の減収で商品及び製品が売れなくなったためだと考えられます。

 

2-6-3.総資産回転比率が低い

 

 

 

H21.3.31

(回転)

H22.3.31

(回転)

H23.3.31

(回転)

総資産回転比率 0.41 0.24 0.36

 一般に、製造業の総資産回転比率は1回転といわれています。

 しかしこの会社の場合、総資産回転比率は0.36回転しかありません。

 特に赤字業績が続いています。不要な資産の売却や不採算事業の整理縮小に努めるなどをして早めに手を打つ必要があると言えるでしょう。

 

2-6-4.閉鎖中の土地について

 

事業所名

 

 

セグメントの名称

 

 

設備の内容

 

土地

(千円)

(面積m2)

北九州工場 閉鎖中 倉庫設備等 71,207
(1,106,57)

 現在、この会社には北九州工場に閉鎖中の土地があります。

 赤字業績が続いていることから、会社として不採算事業の整理縮小に努める必要があります。

 使用していない土地については売却や賃貸をするなどをしてどうにかしてほしいものです。

 

2-6-5.土地の購入について

 

 

 

H21.3.31

(千円)

割合

(%)

H22.3.31

(千円)

割合

(%)

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

有形固定資産            
 土地 1,649,879 21.1% 1,800,473 25.9% 1,820,173 26.3%
総資産合計 7,828,177   6,963,363   6,930,707  

 平成22年3月期に土地が1,800,473千円にまで増えています。

 どうやら本社駐車場用地のために購入したようですが、購入先は創業者一族の役員になっていました。

 役員によって、会社が私物化されていないでしょうか。心配です。

 

2-6-6.役員退職慰労引当金について

 

 

 

H21.3.31

(千円)

割合

(%)

H22.3.31

(千円)

割合

(%)

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

固定負債            
 役員退職慰労引当金 440,572 5.6% 450,801 6.5% 466,216 6.7%
総資産合計 7,828,177   6,963,363   6,930,707  

 負債合計の約半分近くは、役員退職慰労引当金が計上されています。

 しかも、3期に渡ってそれが増えています。

 赤字業績が続き会社の経営を立て直す必要があると思われる状況の中、役員の利益を第一に考えているこのやり方には問題があると言えるのではないでしょうか?

 

 また、役員退職慰労引当金は計上しているにもかかわらず、従業員に対する退職給付引当金が計上されていません。

 そして、役員の報酬等の額やその算定方法の決定に関する方針は決めていないそうです。

 それらの点についても気になるところです。

 

2-6-7.高い役員報酬

 

 ここまで調べてみると、役員1人あたりの報酬と従業員1人あたりの給与の差額についても気になりました。

 そこで、損益計算書から1人あたりどのくらいもらっているのを調べてみることにしたのです。

 すると・・・・

 

1人あたり役員報酬

 60,400千円 ÷ 7人 = 8,628千円

 

1人あたり従業員給料及び手当と賞与

 230,435千円 ÷ 267人 = 863千円

 何と、10倍近くも差がありました。本当に、赤字経営からの脱却をする気があるのでしょうか?

 赤字業績が続いているにも関わらず、役員と従業員の収入にここまで差があるとやる気がなくなると思います。

 

 ※ 役員7人中、3人は創業者一族になっています。

 

2-6-8.営業キャッシュ・フロー利益要素が赤字

 

 

 

H21.3.31

(千円)

H22.3.31

(千円)

H23.3.31

(千円)

営業キャッシュ・フロー利益要素 ▲244,002 ▲522,623 88,438

 平成21年3月期及び平成22年3月期は営業キャッシュ・フロー利益要素が赤字になっています。

 いずれも費用を補うだけの売上高を確保することができていないためです。

 しかし、平成23年3月期になると黒字に転換しています。そのため、今後の業績回復に期待したいと思います。

 

 

 

 

3.2012年2月に株を取得

 


 

 これまで見てきたように多くの問題があったにもかかわらず、会社四季報(2012年1集 新春号)の業績予想から楽観視をして、2012年2月に1株平均191円で株を購入しました。

 それから4か月後の2012年6月に有価証券報告書第34期(平成23年4年1日-平成24年3月31日)が発行され、会社のファンダメンタルズを分析してみました。

 すると、現金及び預金の大幅な減少、売上債権の増加による売上債権回転比率の低下、営業キャッシュ・フロー利益要素の赤字など、明らかに会社のファンダメンタルズは悪化していました。

 そのため私は、1株平均178円で損切をする羽目になってしまったのです。

 

 

 

 

4.現在の株価と業績

 


 

 こちらが現在のチャートになります。

 

 2012年11月の安値149円を底に、2015年6月には650円にまで暴騰しています。

 しかしそれ以降、株価は下がり続けて下降トレンドをたどっています。

 

 そして、現在の業績は・・・

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

13.3

(実績)

2,350 ▲322 ▲318 ▲394 ▲50.8
14.3

(実績)

3,089 ▲42 ▲13 100 12.9
15.3

(実績)

3,234 ▲466 ▲437 ▲528 ▲68.0
16.3

(実績)

2,863 63 74 153 19.8
16.12 変更

(実績)

2,666 207 220 339 43.7
17.12

(実績)

3,655 174 214 237 30.5
18.12

(予想)

4,000 200 210 175 22.5

 2016年12月期まで売上高の減収が続いていましたが、2017年12月期からは増益に転じています。

 また、2016年3月期からは黒字業績を出せる会社に生まれ変わっています。

 会社四季報(2018年2集 春号)の業績記事も明るい内容になっていますので、外部環境に恵まれたようです。

 しかし、今でも役員への報酬を第一にして経営は行われているのでしょうか? 私自身は一番そこが気になるところです。

 

 最後に、株式投資は自己責任でお願いします。

 

 

 

 

 - 業種別, 機械

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