投資を見送った会社、内海造船(7018)について

      2018/04/08

 今回は、2012年6月ごろに会社四季報(2012年2集 春号)で見つけた銘柄、内海造船(7018)に関する記事です

 PERは3.0倍、PBRは0.67倍というバーゲンセール価格にものすごい興味を持ち、翌日には株を購入しました。

 しかし購入後、会社のファンダメンタルズを詳しく調べてみると利益の質に問題があるなど様々な問題が見つかったのです。

 財務データをダウンロードする(Excel形式)

 

 

目 次

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 1-1.記事内容

 1-2.財務内容

 1-3.増収増益の業績

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 2-1.事業の内容

 2-2.販売実績

 2-3.地域ごとの売上高

 2-4.経営上の重要な契約等について

 2-5.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

  2-5-1.現金及び預金が減少

  2-5-2.投資キャッシュ・フローでは、有形固定資産の取得が中心

  2-5-3.会計方針の変更について

 2-6 気になる問題

  2-6-1.仕掛品について

  2-6-2.売上債権回転比率が低下

  2-6-3.前受金の減少

  2-6-4.引当金の未計上

  2-6-5.財務キャッシュ・フローでは、有利子負債の借入が中心

  2-6-6.当期純利益の増益について

3.2012年6月に株を取得

4.現在の株価と業績

 

 

 

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 


 

 では、当時の会社四季報(2012年2集 春号)から、会社のチェックポイントについて解説していきます。

 

 

 

1-1.記事内容

 

 業績記事は、「新造船は厚い受注残(前期末550億円)消化。ただ鋼材など原材料高止まりや価格競争激化で営業益横ばい。最高益。13年3月期は賞与など人件費軽減するが、新規受注6隻は小型船多く採算低下。外注費増や修繕船の価格競争も激しく下降。」と、雲行きの怪しい内容になっています。

 

 

 

1-2.財務内容

 

 自己資本比率は23.5%です。安全性に不安が残ります。

 有利子負債は9,430百万円、総資産の23.8%を占めています。

 資本金1,200百万円に対し、利益剰余金は7,997百万円です。

 

 

 

1-3.増収増益の業績

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

09.3

(実績)

42,554 2,689 2,631 1,295 576.0
10.3

(実績)

65,908 3,776 3,651 1,943 1,013.0
11.3

(実績)

42,957 4,879 4,750 2,035 1,200.0
12.3

(予想)

45,600 4,900 4,800 2,100 1,238.0
13.3

(予想)

44,000 3,900 3,800 1,600 943.0

 2010年3月期まで増収増益が続いていますが、2011年3月期は減収になっています。しかし、利益は最高益を達しています。

 2012年3月期以降はほぼ横ばいの売上高を予想しています。

 

 

 

 

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 


 

 続いて、有価証券報告書第86期(平成22年4年1日-平成23年3月31日)から詳しく見ていくことにします。

 

 

 

2-1.事業の内容

 

 この会社では、船舶の造船、修理に関することを中心に事業を行っています。他にも土木建築、ホテル経営などの事業も営んでいます。

 

セグメントの名称 事業内容
船舶事業 船舶の製造・修理を行っている
その他 土木建築、太陽光発電システムの設置を行っている

ギフトショップ等を行っている

 

 

 

2-2.販売実績

 

セグメントの名称 販売高

(百万円)

割合

(%)

船舶事業 42,411 98.7
その他 545 1.3
合計 42,957  

 この会社では船舶事業が売上高のほぼ100%を占めています。

 

相手先 販売高

(百万円)

割合

(%)

SECURE SHIPPING CO.,LTD. 12,887 30.0
HANDBELL SHIPPING S.A. 17,182 40.0

 また、主な取引先2社だけで売上高の70%を占めています。逆にいうと、この2社に依存している状況といえるでしょう。

 

 

 

2-3.地域ごとの売上高

 

  売上高

(百万円)

比率

(%)

パナマ 21,342 49.7
リベリア 11,466 26.7
日本 6,527 15.2
その他の地域 3,619 8.4
売上高合計 42,957  

 この会社では、日本以外にもパナマやリベリアなどでも販売を行っています。

 

 

 

2-4.経営上の重要な契約等について

 

 この会社では、ユニバーサル造船(株)と経営全般についての基本協定書を結んでいます。

 また、日立造船(株)からは経営面での指導を受けています。

 

 

 

2-5.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

 

 次に、連結財務3表を分析して気になったポイントについて触れていきます。

 

2-5-1.現金及び預金が減少

 

 

 

H21.3.31

(百万円)

割合

(%)

H22.3.31

(百万円)

割合

(%)

H23.3.31

(百万円)

割合

(%)

流動資産            
 現金及び預金 7,248 15.2% 7,214 20.3% 4,829 13.3%
総資産合計 47,574   35,467   36,176  

 平成23年3月期は現金及び預金が減少しています。

 連結キャッシュ・フロー計算書で確認をすると、営業活動で多額の運転資金を使用したためです。

 

2-5-2.投資キャッシュ・フローでは、有形固定資産の取得が中心

 

 

 

H21.3.31

(百万円)

H22.3.31

(百万円)

H23.3.31

(百万円)

投資キャッシュ・フロー ▲3,557 ▲2,677 ▲706
固定資産の取得による支出 ▲3,618 ▲2,170 ▲863

 投資キャッシュ・フローでは、有形固定資産の取得が中心になっています。

 

 

 

H21.3.31

(百万円)

割合

(%)

H22.3.31

(百万円)

割合

(%)

H23.3.31

(百万円)

割合

(%)

有形固定資産合計 13,621 28.6% 13,447 37.9% 12,485 34.5%
総資産合計 47,574   35,467   36,176  

 しかし、有形固定資産合計は増えるどころか逆に減っています。

 その理由について有形固定資産明細表や連結損益計算書で確認を行いました。すると、固定資産除去損や減損損失、減価償却費などの計上額が取得価格を上回っていたことが要因で減っていました。

 

2-5-3.会計方針の変更について

 

 平成22年3月期から請負工事に係る収益の計上基準について、「工事請負に関する会計基準」と「工事契約に関する会計基準の適用指針」の適用を受けています。

 これにより、平成22年3月期の売上高は17,298百万円増加しています。

 また、売上粗利益、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益はそれぞれ2,370百万円増加しています。

 

 

 

2-6 気になる問題

 

 さてこの会社の場合、気になる問題が多数ありました。それについても取り上げたいと思います。

 

2-6-1.仕掛品について

 

 

 

H21.3.31

(百万円)

割合

(%)

H22.3.31

(百万円)

割合

(%)

H23.3.31

(百万円)

割合

(%)

売上高 42,554   65,908   42,957  
流動資産            
 仕掛品 20,670 43.4% 465 1.3% 331 0.9%
総資産合計 47,574   35,467   36,176  

 平成22年3月期には仕掛品が大幅に減っています。

 一般に、たな卸資産(仕掛品も含む)が減るということはモノが売れたという風に考えられますので好ましいことです。

 しかし、仕掛品の減少額が売上高の増収分に匹敵していることには違和感があります。

 そうでなくても、平成21年3月期に仕掛品が総資産の43.4%も占めるのは在庫水準として普通ではありません。

 

2-6-2.売上債権回転比率が低下

 

 

 

H21.3.31

(回転)

H22.3.31

(回転)

H23.3.31

(回転)

売上債権回転比率 24.38 6.39 3.02

 3期に渡り、売上債権回転比率が24.83回転から3.02回転にまで急激に低下しています。

 押し売り販売や支払条件の変更など、何らかの問題があったのではないかと考えられます。

 

2-6-3.前受金の減少

 

 

 

H21.3.31

(百万円)

割合

(%)

H22.3.31

(百万円)

割合

(%)

H23.3.31

(百万円)

割合

(%)

売上高 42,554   65,908   42,957  
流動負債            
 前受金 18,656 39.2% 8,495 24.0% 4,161 11.5%
総資産合計 47,574   35,467   36,176  

 3期に渡り、前受金が18,656百万円から4,161百万円にまで急激に減少しています。また、売上高の増減と比較しても、不自然だと思います。

 もしかすると、売上高の早食いを行っているのかもしれません。

 

※ 前受金とは手付金や内金といったようなもので、商品の仕入れや販売の際に商品代金の一部を先に支払ったり受け取ったりしたときに使用する勘定科目です。もう少し説明を付け加えると、いわゆる将来の売上高のようなものです。

 

2-6-4.引当金の未計上

 

 

 

H21.3.31

(百万円)

割合

(%)

H22.3.31

(百万円)

割合

(%)

H23.3.31

(百万円)

割合

(%)

売上高 42,554   65,908   42,957  
流動負債            
 船舶保証工事引当金 65 0.1% 71 0.2% 70 0.2%
総資産合計 47,574   35,467   36,176  

 3期に渡り、引当金が計上されていません。

 特に、平成22年3月期は売上高は増収です。にもかかわらず引当金がほとんど計上されていません。

 

※ 引当金とは将来発生するかもしれない損失に備え、費用として計上する勘定科目です。これが計上不足ということは、将来のリスクに対する備えが不足しているということです。

 

2-6-5.財務キャッシュ・フローでは、有利子負債の借入が中心

 

 

 

H21.3.31

(百万円)

H22.3.31

(百万円)

H23.3.31

(百万円)

財務キャッシュ・フロー 418 ▲242 1,539
短期借入の純増減額
(▲は減少)
0 0 ▲100
長期借入による収入 2,000 3,300 3,700
長期借入金の返済による支出 ▲1,243 ▲1,196 ▲1,806
自己株式の取得による支出 0 ▲2,009 0

 財務キャッシュ・フローでは、有利子負債の借入が中心になってます。

 

 

 

H21.3.31

(百万円)

割合

(%)

H22.3.31

(百万円)

割合

(%)

H23.3.31

(百万円)

割合

(%)

流動負債            
 短期借入金 1,150 2.4% 1,150 3.2% 1,050 2.9%
 1年内返済予定の長期借入金 1,196 2.5% 1,416 4.0% 1,922 5.3%
固定負債            
 長期借入金 2,112 4.4% 3,996 11.3% 5,384 14.9%
有利子負債合計 4,458 9.4% 6,562 18.5% 8,356 23.1%
総資産合計 47,574   35,467   36,176  

 その結果、有利子負債合計が4,458百万円から、8,356百万円にまで増えています。

 借入れた資金の用途についてですが、連結キャッシュ・フロー計算書で確認をすると平成22年3月期は自己株式の取得のために借入れたと思われます。

 しかし、平成23年3月期は営業キャッシュ・フローの運転資金不足を補うために借入れたのではないかと思います。

 営業キャッシュ・フローの運転資金不足を補うために借入をするくらいなら、自己株式は取得するべきではないと思うのですが、いかがでしょうか?

 

2-6-6.当期純利益の増益について

 

 

 

H21.3.31

(百万円)

H22.3.31

(百万円)

H23.3.31

(百万円)

売上高 42,554 65,908 42,957
当期純利益 1,295 1,943 2,035

 平成23年3月期は売上高が減収であるにもかかわらず、当期純利益は増益です。

 連結損益計算書で確認をすると、売上原価を低く抑えたことが主な要因でした。

 平成21年3月期と平成23年3月期の売上高はほぼ同じであるため、売上原価明細表を見比べてみました。すると、平成23年3月期になるとどんぶり勘定になっているため、詳しく確認をすることはできませんでした。

 わざとどんぶり勘定に変えたのでしょうか?

 

※ 売上原価明細表は連結のものはないため、単独のもので確認をしました。しかし、連結でも単独でも売上高はほとんど変わらないため、確認に差支えはないと考えています。

 

 なお、会社は増益の理由について営業利益率の改善を挙げていますが売上原価のことについては触れていませんでした。

 その点についてもやはり違和感があります。

 

 

 

 

3.2012年6月に株を取得

 


 

 会社四季報(2012年2集 春号)でこの会社を見つけ、2012年6月にはすぐに株を購入しました。

 けど後で詳しくファンダメンタルズを分析してみると、これまで見てきたような問題点を含んだ銘柄であることに気づいたのです。

 そのため、購入して1週間後ぐらいには損切を行いました。

 

 

 

 

4.現在の株価と業績

 


 

こちらが現在のチャートになります。

 

 2013年3月の高値2,550円をつけた後、2016年7月まで下降トレンドが続き、1,120円の安値をつけています。

 しかし2016年9月になると急に株価は暴騰しています。

 一体、何があったのでしょうか?

 

 そして、現在の業績は・・・

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

15.3

(実績)

25,822 135 118 133 78.4
16.3

(実績)

29,544 105 220 209 123.3
17.3

(実績)

30,791 547 307 276 163.2
18.3

(予想)

30,500 400 250 200 118.0
19.3

(予想)

31,000 420 270 210 123.9

 2011年3月期には42,000百万円あった売上高も2017年3月期には30,791百万円にまで減っています。

 しかしそれ以上に、利益は減っています。

 

 最後に、株式投資は自己責任でお願いします。

 

 

 

 

 - 業種別, 輸送用機器

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