投資を見送った会社、長大(9624)について

      2018/04/08

 2011年9月に発売された会社四季報(2011年4集 秋号)で発見した割安株がありました。それは、長大(9624)です。

 来期のPERは8.5倍、PBRは0.19倍です。この安さに興奮した私は、はやる気持ちを抑えて会社のファンダメンタルズについて詳しく調べてみました。

 すると、お買い得と思っていた銘柄でしたが利益捻出の疑いが見られたことから、最終的には投資を見送りました。

 財務データをダウンロードする(Excel形式)

 

 

目 次

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 1-1.記事内容

 1-2.財務内容

 1-3.2012年9月期から期待の業績

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 2-1.売上高が年々減少

 2-2.事業の内容

 2-3.販売実績

 2-4.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

  2-4-1.現金及び預金が増えている

  2-4-2.建物及び構築物(純額)が増えている

  2-4-3.投資有価証券が減っている

 2-5.気になる問題

  2-5-1.過剰な繰延税金資産

  2-5-2.営業キャッシュ・フロー利益要素より、当期純利益が多い

3.投資は見送る

4.現在の株価と業績

 

 

 

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 


 

 では、当時の会社四季報(2011年4集 秋号)から、会社のチェックポイントについて解説していきます。

 

 

 

1-1.記事内容

 

 業績記事は、「震災関連で国内受注増。一部期ずれ響き、赤字転落。減配。12年9月期は連結1増(11年3月期売上高83億円)の利益貢献見込まず。国内は公共投資減退でも海外受注が増勢で寄与。期ずれ含む潤沢な受注こなし、営業益浮上。6円復元も。 」と震災関連で材料視されそうな内容になっています。

 

 

 

1-2.財務内容

 

 自己資本比率は71.1%と、安全性は十分です。

 有利子負債は371百万円、総資産のわずか2.9%程度だけしかありません。

 資本金3,107百万円に対し、利益剰余金は1,131百万円だけです。

 驚くことに、現金同等物を33億円保有しているこの会社の時価総額はたったの17.6億円です。世紀のバーゲンセールと表現してもいいでしょう。

 

 

 

1-3.2012年9月期から期待の業績

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

08.9

(実績)

13,503 447 472 88 9.4
09.9

(実績)

10,145 ▲378 ▲333 ▲724 ▲80.9
10.9

(実績)

10,711 367 375 297 32.9
11.9

(予想)

8,500 ▲800 ▲700 ▲600 ▲66.2
12.9

(予想)

13,000 300 350 200 22.1

 売上高は2011年9月期まで減少する予想になっています。そして、赤字業績に転落する予想です。

 しかし、2012年9月期以降は、売上高も利益も回復をする予想になっています。

 

 

 

 

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 


 

 続いて、有価証券報告書第43期(平成21年10年1日-平成22年9月30日)から詳しく見ていくことにします。

 

 

 

2-1.売上高が年々減少

 

  平成18年9月 平成19年9月 平成20年9月 平成21年9月 平成22年9月
売上高
(百万円)
13,289 13,125 13,503 10,145 10,711
当期純利益又は当期純損失(▲)
(百万円)
111 179 88 ▲724 297
総資産額
(百万円)
14,168 14,699 12,883 12,149 12,484
自己資本比率
(百万円)
14,168 14,699 12,883 12,149 12,484
営業活動によるキャッシュ・フロー
(百万円)
▲68 866 ▲1,100 ▲354 423

 売上高は年々減少していますが、平成22年9月期から回復しています。

 総資産額は平成20年9月期からほとんど変わっていません。

 そして一番気になることは、平成18年9月期と平成20年9月期は黒字業績であるにもかかわらず、営業キャッシ・フローが赤字であることです。

 

 

 

2-2.事業の内容

 

 この会社は、建設コンサルタント事業と情報サービス事業で構成されています。

 

事業区分 主要事業
建設コンサルタント事業(構造分野) 橋梁・特殊構造物等に関する調査・計画・設計・施工管理、各種構造解析・実験、CM(コンストラクション・マネジメント)業務、土木構造物・施設に関するデザイン等
建設コンサルタント事業(社会計画分野) 道路、総合交通計画、道路整備計画、路線計画、ITS(高度道路交通システム)、環境、都市・地域計画、河川全般に関する調査、計画、設計、運用管理、パブリックマネジメント、アドバイザリー業務
情報サービス事業 情報処理に関するコンサルティング、システム化計画、設計、ソフトウェア開発、情報コンテンツ開発・運営・配信サービス、各種公共施設のデータ管理等情報サービス全般
その他の事業 有料道路等の運営

 

 

 

2-3.販売実績

 

事業部門の名称 販売高(百万円) 割合(%)
建設コンサルタント 9,401 87.8
情報サービス 1,025 9.6
その他 283 2.6
合計 10,711  

 この会社では、建設コンサルタント事業の売上高が一番多く、売上全体の87.8%を占めています。

 

相手先 販売高(百万円) 割合(%)
国土交通省 5,170 48.3

 また、主な取引先は国土交通省になっており、売上高の48.3%を占めています。

 

 

 

2-4.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

 

 次に、連結財務3表を分析して気になったポイントについて触れていきます。

 

2-4-1.現金及び預金が増えている

 

 

 

H20.9.30

(百万円)

割合

(%)

H21.9.30

(百万円)

割合

(%)

H22.9.30

(百万円)

割合

(%)

流動資産            
 現金及び預金 3,136 24.4% 3,002 24.7% 3,371 27.0%
総資産合計 12,878   12,142   12,477  

 平成22年9月期には現金及び預金が増えています。

 連結財務3表で確認をすると、営業キャッシュ・フローから十分な資金が得られたためのようです。

 

2-4-2.建物及び構築物(純額)が増えている

 

 

 

H20.9.30

(百万円)

割合

(%)

H21.9.30

(百万円)

割合

(%)

H22.9.30

(百万円)

割合

(%)

有形固定資産            
 建物及び構築物(純額) 1,152 8.9% 1,090 9.0% 1,637 13.1%
総資産合計 12,878   12,142   12,477  

 平成22年9月期には建物及び構築物(純額)が1,637百万円にまで増えています。

 増えた要因は、日本自動車(株)匿名組合を新たに連結子会社にしたためのようです。

 

2-4-3.投資有価証券が減っている

 

 

 

H20.9.30

(百万円)

割合

(%)

H21.9.30

(百万円)

割合

(%)

H22.9.30

(百万円)

割合

(%)

投資その他の資産            
 投資有価証券 1,069 8.3% 746 6.1% 705 5.7%
総資産合計 12,878   12,142   12,477  

 平成21年9月期には投資有価証券が減っています。

 連結財務3表や有価証券明細表で確認を行うと、流動資産の有価証券へ振替えたことや評価損を計上したこと、そして保有銘柄を売却したことが要因で減っていました。

 

 

 

2-5.気になる問題

 

 さてこの会社の場合、気になる問題点がいくつか見つかりました。そのことについて、1つずつ取り上げていきたいと思います。

 

2-5-1.過剰な繰延税金資産

 

 

 

H20.9.30

(百万円)

割合

(%)

H21.9.30

(百万円)

割合

(%)

H22.9.30

(百万円)

割合

(%)

流動資産            
 繰延税金資産 163 1.3% 81 0.7% 197 1.6%
投資その他の資産            
 繰延税金資産 701 5.4% 669 5.5% 742 5.9%
総資産合計 12,878   12,142   12,477  

 流動資産と投資その他の資産に計上されている繰延税金資産を合計すると、総資産の7.5%を占めています。

 繰延税金資産とは、税務と会計で生じたずれにより、前払いで税金を支払ったときに計上される勘定科目です。

 そして前払いで支払った税金のずれが解消された場合、繰延税金資産を取り崩して費用として計上すると、税金を減らす効果があります。しかし、最終利益も減ってしまいます。

 この会社のように繰延税金資産が多いとあえて費用として計上せず、最終利益を多くすることで儲かっているように見せたいのではないかという可能性が考えられます。

 

2-5-2.営業キャッシュ・フロー利益要素より、当期純利益が多い

 

 

 

H20.9.30

(百万円)

H21.9.30

(百万円)

H22.9.30

(百万円)

営業キャッシュ・フロー利益要素 ▲1,450 229 91
当期純利益 88 724 297
差額 1,538 495 206

 平成20年9月期と平成22年9月期は営業キャッシュ・フロー利益要素より、当期純利益の方が多くなっています。つまり、現金の裏付けが少ない利益を計上している可能性があるということです。

 もしかすると、会社として儲かっているように見せたいので、利益捻出を行ったのかもしれません。

 

 

 

 

3.投資は見送る

 


 

 この会社の売上高は官公庁に対する割合が76.4%を占めています。官公庁からの受注を取るために競争入札が行われると思いますが、入札に参加するためには黒字業績による実績が求められると考えられます。

 そう考えると、この会社が利益の捻出を行って儲かっているように見せたいという動機は十分考えられます。

 しかし、それは投資家の目を欺くということにつながると私は考えています。そのような会社を信用することはできません。結果的に私は投資を見送りました。

 

 

 

 

4.現在の株価と業績

 


 

 こちらが、現在のチャートになります。

 

 私がこの会社に注目をしたのは2011年11月ごろでした。そのときの株価は180円ぐらいだったと思いますが、それか2014年7月には1,298円の高値にまで株価は高騰しています。

 

 そして、現在の業績は・・・

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

13.9

(実績)

22,255 1,362 1,392 819 91.5
14.9

(実績)

25,613 1,779 1,832 983 113.6
15.9

(実績)

26,215 1,116 1,154 538 62.2
16.9

(実績)

24,850 810 658 74 8.5
17.9

(実績)

26,661 1,531 1,689 1,060 120.7
18.9

(予想)

27,300 1,050 1,050 600 68.1
19.9

(予想)

28,000 1,200 1,200 680 77.2

 売上高は2倍くらいになっていますが、利益は2倍以上になっています。

 利益剰余金も増えていましたので、黒字業績で利益を積み上げてきた様子が伺えます。

 

 最後に、株式投資は自己責任でお願いします。

 

 

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