投資を見送った会社、ミューチュアル(2773)について

      2018/04/09

 当時、発売された会社四季報(2014年1集 新春号)で注目していた銘柄があります。それは、ミューチュアル(2773)です。

 卸売業を行っているこの会社の当時のPERは15.3倍であったものの、PBRは0.44倍と割安でした。また、株価も底値で低迷をしていたことや、地味で誰も見向きもしないと思っていたことも私には魅力的でした。

 早速、この会社について有価証券報告書で調べてみると、ある問題を抱えていたのです。

 財務データをダウンロードする(Excel形式)

 

 

目 次

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 1-1.記事内容

 1-2.財務内容

 1-3.黒字続きの業績

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 2-1.事業の内容

 2-2.安定した市場

 2-3.営業キャッシュ・フローが赤字だらけ

 2-4.投資キャッシュ・フローに問題が・・・

 2-5.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

  2-5-1.有形固定資産が少ない

  2-5-2.投資有価証券が増えている

  2-5-3.有利子負債がほとんどない

3.気になる問題

 3-1.受取手形及び売掛金が多い

 3-2.仕入先に問題の可能性が・・・

4.投資は見送る

5.その後、株価は・・・

 

 

 

 

1.会社四季報で、会社を大まかにチェック

 


 

 では、当時の会社四季報(2014年1集 新春号)で注目したポイントについて解説します。

 

 

 

1-1.記事内容

 

 業績記事では「充填機の反落きつい。ただ検査装置や部品は順調。下記にずれ込んだ製剤機の大口案件が寄与し営業微減益に。貸倒引当金(2.9億円)回収、有証売益計上。15年3月期は取引正常化で微増益図る」と、明るい兆しが見え始めた内容になっています。

 ただ、「貸倒引当金(2.9億円)回収」という一文が気になります・・・。

 

 

 

1-2.財務内容

 

 自己資本比率は65.5%もあり、十分です。

 資本金669百万円に対し、利益剰余金は5,306百万円もありました。十分儲けていると言っていいでしょう。

 総資産10,659百万円に対し、有利子負債は183百万円しかありません。

 また、2013年5月には株式消去を行っていました。

 

 

 

1-3.黒字続きの業績

 

  売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

利益

(百万円)

1株益

(円)

09.3

(実績)

9,428 434 477 266 34.4
10.3

(実績)

8,532 164 213 119 15.7
11.3

(実績)

8,520 262 335 158 21.3
12.3

(実績)

9,025 435 468 196 26.8
13.3

(実績)

9,695 439 341 146 20.2
14.3

(予想)

9,000 400 450 200 27.5
15.3

(予想)

9,300 430 480 210 28.9

 2009年3月期から黒字業績が続いており、すばらしい内容です。2014年3月期は売上高が下がるものの、利益は上がる予想です。

 

 

 

 

2.有価証券報告書から詳しく見ていく

 


 

 続いて、有価証券報告書第69期(平成24年4年1日-平成25年3月31日)から詳しく見ていくことにします。

 

 

 

2-1.事業の内容

 

 会社の事業内容は、医薬品業界、化粧品業界、食品業界向けの産業用機械等の改良・製造・販売を行っているようです。

 

 

 

2-2.安定した市場

 

 この会社は主に、医薬品・化粧品業界で販売を行っているようです。そして、高齢化社会でも中長期的には一定水準の設備投資が期待できるそうです。

 

 

 

2-3.営業キャッシュ・フローが赤字だらけ

 

  平成21年3月 平成22年3月 平成23年3月 平成24年3月 平成25年3月
当期純利益
(千円)
266,423 119,523 158,851 196,751 146,996
営業キャッシュ・フロー
(千円)
▲932,085 1,410,270 ▲47,446 ▲1,333,044 1,440,932

 当期純利益は黒字であるにもかかわらず、営業キャッシュ・フローは赤字だらけです。

 黒字業績であるにもかかわらず、あまり儲かっていない印象を受けます。

 

 

 

2-4.投資キャッシュ・フローに問題が・・・

 

  平成21年3月 平成22年3月 平成23年3月 平成24年3月 平成25年3月
投資キャッシュ・フロー
(千円)
▲78,133 574,346 611,351 ▲177,596 ▲122,091

 一般に、会社は事業活動を行っていくために新たな設備投資を行います。そのため、投資キャッシュ・フローが赤字ということは多くの場合、設備投資を行うために資金を使っていると考えられます。

 しかしこの会社の場合、投資キャッシュ・フローの内訳をみると、貸付による支出がほとんどでした。

 

 

 

2-5.連結財務3表(連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書)を分析してみる

 

 次に、連結財務3表を分析して気になったポイントについて触れていきます。

 

2-5-1.有形固定資産が少ない

 

 

 

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

H24.3.31

(千円)

割合

(%)

H25.3.31

(千円)

割合

(%)

有形固定資産            
 建物及び構築物(純額) 326,463 2.9% 302,007 2.6% 285,681 2.5%
 機械装置及び運搬具(純額) 23,101 0.2% 27,031 0.2% 28,707 0.3%
 土地 476,274 4.3% 476,274 4.1% 476,274 4.2%
 建物仮勘定 2,556 0.0% 6,732 0.1% 0 0.0%
 その他(純額) 22,174 0.2% 20,651 0.2% 18,737 0.2%
有形固定資産合計 850,568 7.7% 832,695 7.2% 809,399 7.2%
総資産合計 11,089,568   11,588,014   11,295,438  

 この会社は機械業に属するため、多額の設備投資が必要になるはずです。しかし、有形固定資産は総資産の7.2%ほどしかありません。

 あまり設備投資を必要としない事業を行っているのかもしれません。

 

2-5-2.投資有価証券が増えている

 

 

 

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

H24.3.31

(千円)

割合

(%)

H25.3.31

(千円)

割合

(%)

投資その他の資産            
 投資有価証券 1,068,064 9.6% 1,096,511 9.5% 1,398,399 12.4%
総資産合計 11,089,568   11,588,014   11,295,438  

 投資有価証券が増え、総資産の12.4%を占めるようになっています。どうやら、含み益が生じたためその分が増えたようです。

 

2-5-3.有利子負債がほとんどない

 

 

 

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

H24.3.31

(千円)

割合

(%)

H25.3.31

(千円)

割合

(%)

流動負債            
 短期借入金 155,000 1.4% 235,000 2.0% 100,000 0.9%
 1年内返済予定の長期借入金 19,920 0.2% 19,920 0.2% 19,920 0.2%
固定負債            
 長期借入金 71,780 0.6% 51,860 0.4% 31,940 0.3%
有利子負債合計 246,700 2.2% 306,780 2.6% 151,860 1.3%
総資産合計 11,089,568   11,588,014   11,295,438  

 有利子負債合計は151,860千円しかなく、総資産額の1.3%しかありません。これは、魅力的です。

 また、当座比率は168%もありますから、多少なりとも資金繰りに余裕が感じられます。

 

 

 

 

3.気になる問題

 


 

 さて、ここまで有価証券報告書を活用して会社の様々な面を見てきました。しかし、問題点も見つかったのでまとめて解説します。

 

 

 

3-1.受取手形及び売掛金が多い

 

 

 

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

H24.3.31

(千円)

割合

(%)

H25.3.31

(千円)

割合

(%)

流動資産            
 受取手形及び売掛金 3,029,877 27.3% 4,048,003 34.9% 3,489,721 30.9%
総資産合計 11,089,568   11,588,014   11,295,438  

 会社が事業を行っていくためには、仕入代金を支払ったり、売上代金を回収したりするための運転資金が必要です。その運転資金となる受取手形及び売掛金が総資産の30%近くもあります。

 よっぽどキャッシュリッチな会社でもない限り、受取手形及び売掛金は多くても20%までが適正水準でしょう。

 この会社の場合、資金繰りに多少なりと余裕は感じられるものの、総資産の30%近くもあると「不良債権があるのではないか?」という懸念を持ちます。

 

 

 

3-2.仕入先に問題の可能性が・・・

 

 

 

H23.3.31

(千円)

割合

(%)

H24.3.31

(千円)

割合

(%)

H25.3.31

(千円)

割合

(%)

流動資産            
 前渡金 584,222 5.3% 970,231 8.4% 559,715 5.0%
 短期貸付金 0 0.0% 363,150 3.1% 0 0.0%
投資その他の資産            
 長期貸付金 0 0.0% 15,210 0.1% 681,752 6.0%
 貸倒引当金 ▲648 0.0% ▲75 0.0% ▲353,544 ▲3.1%
総資産合計 11,089,568   11,588,014   11,295,438  

 前渡金が559,715百万円もあり、総資産の5%近くも占めています。

 平成24年3月期まであった短期貸付金はなくなっていますが、平成25年3月期から長期貸付金が倍近くに増え、総資産額の6.0%も占めるようになっています。貸付先は、株式会社鈴木製作所になっています。ミューチュアル(2773)と鈴木製作所との関係について調べると、どうやら仕入先のようです。

 このことから、ミューチュアル(2773)が仕入先の資金繰りの手助けをしている可能性が考えられます。不良債権化したときのために貸倒引当金は計上していますが、貸付金の半分ほどしかありません。

 業績が黒字であるにもかかわらず、営業キャッシュ・フローが赤字だらけであることについて触れましたが、その原因は仕入先が大きく関係しているかもしれません。

 

 

 

 

4.投資は見送る

 


 

 以上より、私はこの会社への投資を見送りました。理由は仕入先が資金繰りに苦しんでいる可能性があり、倒産でもしたら会社の業績に大きな悪影響を与える可能性が考えられたためです。そうでなくても、貸付金が不良債権化する可能性も十分考えられます。

 

 

 

 

5.その後、株価は・・・

 


 

 これが、現在の株価です。

 

 私がこの会社に注目をしたのは、2014年1月頃です。その時の株価は、400円ぐらいでした。

 しかし株価は2015年5月に急騰し、1,000円を超える高値にまで上昇しています。最近発売された会社四季報(2018年1集 新春号)を見てみると、利益は4倍近くにまで上がっています。

 私の懸念は外れたのでしょうね・・・( ;∀;)

 

 最後に、株式投資は自己責任でお願いします。

 

 

 

 

 - 業種別, 機械

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